最終話:最善の関係


○5月26日:ル・マンの日
 →1923年、第一回ル・マン24時間耐久レース開催

++
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20050526-00000055-nks-ent もう名前が分かりません(笑



「ねぇ」
N子はニコっと笑って僕を見た。


「ん?なぁに?」
「来週辺り、ゴハンに行こうよ♪」
そう言ってN子は僕の手を取った。


やれやれ。
取り敢えずは現状維持なのかな。


僕はそう思い、ゴハンに行く事にした。






ゴハン? うん、行こうか。最近は外食してないし、大丈夫だよ」
僕はそう答え、手帳を開いた。




確かにこの1年、数える程しか外食をしていなかった。
それは意識的に回数を減らしていたからだ。
もちろん過去の教訓(K子、I子さん等)から減らしていたワケだが
ここで気を抜くと、また同じ事を繰り返してしまう。


しかも今回はヨメさんが最も嫌っているN子が相手なのだ。
僕も慎重にならざるを得ない。


そう考えると、なかなか厄介な状態なのは確かだった。




僕の場合、ヨメさんが恐ろしく毛嫌いしてる相手だから
連絡を取り合っている事すらも、バレると危険な事になる。




N子の場合、ダンナの予想がビンゴだった上に自己申告している。
離婚届の存在は、ダンナの勝負所なのだろう。
だからこうやって会っている事を知ったら、激怒するのは間違いが無い。


改めて僕は「綱渡りだな、こりゃ」と思うと共に
どうやれば面倒な事にならないかを考えていた。


僕にとっても、ここは勝負所だった。






「ぽんはいつ頃だったらヒマなの?」
僕があれこれと考えていると、N子が聞いてきた。




「んーとね、週の後半なら大丈夫だよ」
僕は意識を戻し、そう答えた。


「じゃあ○曜日にしようよ。
 ダンナには会社の飲み会って言っとくから、遅くなっても平気だし」
そう言ってN子は笑った。






・・・




・・・・・




遅くなっても平気って何だ?
せっかく、ペースを落とそうとしているのに(笑




そりゃ遅くなる事になっても構わないとは思うけど
「まぁ、ゴハンの後はテキトーで良いっしょ」
と言って誤魔化し、即答を避けた。




N子は僕がお酒をほとんど飲まない事を知っている。
その上で「遅くなっても良い」と言っているのだ。
つまり連れ込まれても良いよと僕に伝えているのだ。




僕は今の状況でSEXをしたとしても心境の変化が起こらない自信があったけど
N子はそうではあるまい。


サバサバしていると思っていたが、それは僕の勘違いで
一途で純粋な部分があるのだ。


だからSEXをしてしまうのはリスクを負い過ぎる。


++


取り敢えずゴハンの約束だけをし、その日は帰る事にした。




家に帰りヨメさんにゴハンの事を伝えると
あっけなく「あ、ホント。行ってらっしゃい」と返事が返ってきた。


最近、大人しくしていた効果が出たのか
イヤな顔をして縛り付けるのも得策ではないと思ったのか
その真意は不明だが、僕にとっては楽だった。






この何ヶ月か、僕は色々な可能性を考えていた。
一瞬だが「N子とくっつくのも悪くないな」とも思った。
でも、そこに至る道程は険しすぎて、僕にはそれを乗り越える気概が無かった。




結局の所、N子は「過ぎ去った領域」に居る人物で
昔の関係に戻れるワケでもなく、僕自身もそれは求めていなかった。




僕が求めていたのは
今のお互いの環境で、最善の関係だった。




僕にとってそれは
仲の良い友達であり、それ以上の事はリスクがなければOKだった。


N子にとっても、既にリスクを負ってしまっているのだから
仲の良い友達という関係の方が良いのだろう。






そんな事をあれこれ考えていたら、会う前日になってしまった。
メールをチェックすると、N子からメールが来ていた。


きっと、翌日の待ち合わせの件だろう。
何処でゴハンを食べるか候補を考えていたので、それを返信しよう。




全ては明日だ。
会ってから考えれば良い。




今現在は何も起こっていないのだから
この時点で考えても意味がないのだ。




何か起こるなら起これば良い。
それから考えよう。


++


サヨナラ」終わり