その5





○10月19日:ブラックマンデー(1987年)
 
++
 
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20041019-00000504-yom-bus_all
ところで二千円札はどうなったんだ?
 
++
 
 
僕の乏しい時計の知識を総動員して見つけ出したのは、スイスのメーカーのクオーツだった。
でも見つけ出した、というのは本当ではない。僕が持っている時計の色違いなだけだ。
 
 
この時計は「集まり」の時などに使っているので、使い勝手の良さは知っていた。
選ぶ手間が省けると同時に、
お揃いの時計を持っているという、高校生みたいな感慨に浸る事も出来る。
 
 
 
「どう? 見やすい?」
プレゼントはこの一瞬の緊張感がなんとも言えない。
R子の好みの色があれば良かったのだが、無かったので違う色にしたのだが
正直な所、不安は残っていた。
 
 
 
「うん。バッチリ。文字盤は見やすいし、バンドもかわいいし」
「そっか。そりゃ良かった」
R子は腕を上げたり下げたりしながら、付け心地を楽しんでいるようだった。
「ココが好き。このバンドを留めるトコロ」
そこはこの時計の特徴的な部分で、僕も気に入っている場所だった。
 
 
 
「ありがとね、ホントに」
「良いって、このくらい。後で肩でも揉んでくれれば良いよ(笑」
「なにー(笑」
 
 

  1. +

 
 
「あたし、凝ってるかどうか分かんないんだよね」
僕は自分の前にR子を座らせ、肩に手を置いた。
R子に肩を揉んでもらい、じゃぁアタシも、となったのだ。
 
 
 
「どうだろ。でも少し凝ってるかも」
僕は軽くウェーブのかかったR子の髪を纏め、肩を揉みだした。
肩こりは肩こりを知る、という僕の作った格言通り、ポイントを探すのは楽だ。
首筋に親指を置き、そこから肩まで指を滑らすと堅い部分が見つかった。
 
 
 
「痛かったら言ってね」僕はそう言い、上から軽くツボを押した。
「う、、わ。い、たいけど、気持ち良いかも」
「結構凝ってるよ、これ」
「ホント〜? なんでだろう」
「多分ねぇ、立ち仕事だからだよ。ふくらはぎに血が溜まってるんだよ」
僕はコリコリと押しながら、整体の先生に聞いた事をそのまま伝えた。
「なんで溜まるとダメなの?」
「ふくらはぎにはね、ポンプがあるだってさ。血を心臓に戻す」
「うん」
「で、そこに血が溜まると戻らなくて血行が悪くなって凝っちゃうの」
「へ〜。そうなんだ。あ、そこ痛い」
「お、わりぃ。だからお風呂から出たら、ふくらはぎを揉むと良いよ」
「今度やってみようっと」
 
 
 
そう言ってR子は自分のふくらはぎを揉みだした。
「いったー! なにこれ、すごく痛いんだけどっっ」
「あははは。痛いよ、そこ。だから凝ってるんだよ(笑」
 
 

  1. +

 
 
僕は少し戸惑っていた。
肩揉みも終え、一緒にテレビを見ながら雑談していたのだが、体勢は肩揉みの時のままだった。
つまり、僕が壁を背にし寄っかかり、R子は僕の足の間に座り、僕に寄っかかっていた。
手の置き場の無い僕は、仕方なくR子のカラダに手を回していた。
 
 
普通、こういう体勢って彼氏彼女がやるもんじゃないか?
ふとそう思ったのだ。
 
 
 
続く★