8:片想いと脇役


○5月17日:プッシュホン式電話機発売(1968年)

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http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20050514-00000011-ykf-ent スカ○○説もアリ





ある日の夕方、携帯に公衆電話からの着信が入った。


誰だろう?
僕はそう思い電話を取った。






「あー、ぽん? ごめんねー、こないだは変なメールして」
それは異様に明るい声のN子だった。




「N子!? どうしたの? こないだのメール・・・」
「ほんっとゴメン。旦那に喋ってさぁ、朝までケンカしてたの」
「で?」僕はその先を急かした。


「そしたらキレちゃってさぁ。まぁ当たり前なんだけど。それでメール打たされたの」
「・・・なんだそりゃ(笑」
僕は笑いとも苦笑いともつかない声でそう言った。




「今日、何時に仕事終わるの?」
N子はそう言ってきた。




僕としても、一体何がどうなったのか知りたかったし
N子に時間を合わせ、会う事にした。


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待ち合わせ場所に着くとN子は手を振って僕を出迎えた。
しかしその顔には疲労と寝不足が居座っており
体調が優れないのは明白だった。




お店に入り席に着くなりN子は口を開いた




「ホント、ゴメンね〜。旦那もうキレまくっちゃってさ。
 夜から話しを始めたんだけど、気が付いたら次の日のお昼でさぁ」
そう言って笑っていたが、多分笑い事じゃないのだろう。




しかし本人が笑っているのだし、僕が神妙な顔つきをしても仕方がなかった。




「まったく、まだ喋るな、って言ったじゃん」
僕はそう言いN子を見た。




「ゴメンね。でもさ、もうどうしようもなかったし」
そう呟くN子の気持ちも分からないでもなかったので、僕はそれ以上何も言わなかった。




「で、話をしてどうなってあのメールが来たの?」
僕はテーブルに置かれたコーヒーを一口飲みながら聞いた。




「んとね、前、付き合ってた事は言わなかったんだけどね、
 7年前からずーっと好きで、今でも片想い中だって言ったの。
 したらさ、「オレ、脇役じゃん」って言ってた(笑
 それに付き合ってる事はさすがに言えないしさ(笑」
「ははは。脇役か」
と僕も笑って答えたが












付き合ってるってなんだ?






えーと
そういう事になってたんですか?




付き合ってるなんて知らなかったです(笑




それにしても、旦那の受けたショックも大きかった事だろう。
結婚する前からN子を疑ってはいたが、それが正しかったのだ。
「オレの勘違いであって欲しい」と思っていた筈だし
N子も「思い過ごしだよ」と言い続けていたのだ。




「それでね」とN子は話を続けた。
「今はどういう関係なんだ? って聞かれて、片想いだよ、って答えたんだけど
 なかなか信じてくれなくて。それに「オレとセックスしないのはヤツとしてるからか」
 とか言い出してさ。あたしもそれ聞いてムカついちゃってさ。まだしてないのにね(笑」




「そっかー。旦那も色々と悶々してたんだ、なんでしないんだろう、とか(笑」
「ねー。アタシは本当に疲れてるから何もしたくないだけだったんだけどね」
「うーん、そう考えるとタイミングが悪いというか、なんというか(笑」




でも、旦那がそう考えるのもムリが無い話だった。
さすがに新婚早々で奥さんがセックスの相手をしてくれなくて
しかも「片想いの相手が居る」と聞かされれば、当然そう考えるだろう。
きっと「疲れてるからしたくない」という考えは存在しないと思っているのだ。




「それであのメールが来たの?」
そう言って僕は届いたメールをN子に見せて笑った。