その2


○9月22日:ボブ・サップ誕生日(1974年)
 →最近、見かけないなぁ
  1. +
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20050922-00000018-spn-ent ロンパールームが懐かしい・・・



再会して三度目のお茶は、
昔たまに入った喫茶店だった。


薄暗くて、静かで、美味しいコーヒーが飲めて
支払いもリッチなお店だ。




その日、My子は珍しくメガネ姿でやってきた。
「コンタクト、調子悪ぅてなー」


僕はそのフレームに見覚えがあり、聞いてみると
やはり昔から使っているフレームだった。
レンズだけ新しいのにし、ずっと使っているらしい。


「へー。久しぶりに見るなぁ、メガネ姿」
付き合っていた頃はしょっちゅうメガネだったので
その姿は覚えていたが、いざ目の前にすると新鮮な気分になった。


「あんまジロジロ見んなー」
そう言ってMy子はメガネを外してしまった。





僕はMy子と話をする時に


1・付き合っていた頃の事
2・ヨメさんの事
を極力話題に出さないようにしていた。


付き合っていた頃の事は、僕にとっても引け目を感じる部分でもあったし*1
僕自身の気持ちが良く分かっていない状態で、状況を進展させたくなかったからだ。


例えば僕がMy子をまた好きになったとしたならば
「あの頃が懐かしいよね、なんとなく」みたいな論法を使う事も可能だ。
それにより距離感を縮める事だって出来る。


でも、まだ僕の感情が定まっていないのに距離を縮めてしまうと
かなり厄介な事になってしまうし、
最悪、またMy子にイヤな思いをさせてしまう可能性もあった。




だから僕は昔話をするにしても、
別れた以降の事しか話さなかった。


My子も同様なのか
付き合っていた頃の話はせず、ここ数年の事を話していた。




会うのは三回目だったが、話は尽きなかった。
My子の実家時代の話はそれなりに興味を引いたし
こっちに戻ってきてからの話も面白かった。





僕は、いつまで今の家に住んでいるのか聞いてみた。


「あんな僻地、住んでても楽しくないでしょ?」
「そうなんやよなぁ」


「引越ちゃいなよ」
「はぃい?」
僕がアッサリと引越を提案すると、My子は驚いた。


「引越って何処へ?」
「そうだなぁ。○○市とかどう?」
僕はMy子が以前住んでいた街を候補に出した。


「そりゃぁあの街は住みやすいし慣れてるけどさぁ」
「でしょー? 越しちゃえ越しちゃえ」
「そう簡単に言ってくれるなー。引越資金、貯めなイカンもん」




その街は僕も良く知っている所で
ウチからも近いし、電車の路線も同じだった。


正直、今My子が住んでいる場所は遠すぎるし、
会うのにも移動時間も距離も多すぎた。


だから引っ越せというのは、主に僕のワガママから来ているのだ。




「でもさ、引っ越して家が近くなれば、会いやすくなるよ?」
僕はイタズラっぽく笑ってそう言った。




「う・・・ そうなんやけどさぁ」
My子は言葉に詰まったように答えたが、そこには同意の表情が含まれていた。




My子は、テーブルに置いた僕の手を取って、
指を持ったり手の甲をつねってみたり遊びながら話を続けた。


「引越、元々考えてはいたんやけど、家具とか揃えにゃならんしなぁ。
 資金はまぁまぁ有るんやけど、仕事も変えにゃならんし・・・」




「そっかー。仕事の事もあるもんなー」
僕はMy子に手を預けながらそう答えた。




My子は家の近くで働いているので
引っ越せば職を変えなくてはならなかった。


僕の身勝手なワガママで、そこまで生活環境を変えさせて良いものか悩んだが
それでも「近い方が良いかな」という考えは変わらなかった。





引越の事は、当然結論が出ないまま二人で駅のホームへ向かった。
同じホームから反対方向の電車に乗るのだ。


ホームにある柱に寄りかかりながら、My子の乗る電車が来るのを待った。


「次、いつ会おうか」など色々話をしている間
僕の肩に、My子の頭が遠慮がちに乗っかっていた。

*1:ロクでもない振り方をしたから