9:絡めた指

○2月3日:ジュディ・オングの日(アメリカ・ネバダ州が制定)
      →ネバダ州が?
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http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20060203-00000030-sanspo-ent 良いね、遠山景織子。けっこう似合いそう。願わくばベタになりませんように(笑



クリスマスが近づいたある日、またW子と会う事にした。




僕の中では、何一つ解決しないままだったが、
そんな事はお構いなしだった。


そして、「ついこないだ、会ったばかりじゃなかったっけ?」
という疑問は全く持ちあわせていなかった。






時期が時期なだけに、なんとなく「プレゼントをあげたいな」
と思い、僕はピアスを探した。




今まで2回会って、服装の趣味や本人の雰囲気から
大体「これなら違和感なく似合いそうだな」というイメージは出来上がっていた。


あとはそのイメージに合うピアスがあるかどうかだったが
それほど時間を掛けずに見つける事が出来た。





「ちょっと早いけど」
僕はそう言って、ピアスの入った箱をカバンから取り出した。




いつもの喫茶店は、例の如く空いていて
僕らの他には店員さんと、数人の客しかいなかった。


その日はカウンター席だったので、僕とW子は横並びに座っていた。




クルクルと回転する椅子をW子の方に向け、
ピアスの入った箱をテーブルの上に置いた。




「わ! なんだろう。ひょっとしてクリスマス?」
W子はニコニコした顔で僕を見ながらそう言った。




「うん。早いけどね。たまたま良さそうなのを見つけてさ」
僕はちょっとウソをついて箱をW子の前に差し出した。




W子はニコニコしたまま、箱を開け、ピアスを取り出した。




ポストとキャッチと本体がK14WG、
埋め込まれた小さな石は、トルマリンの一種だった。




「つけてみて良い?」
W子は目を輝かせながら楽しそうに言った。


「もちろん」
僕は新しいタバコに火を点けながらそんなW子を眺めていた。




「あれ? 最近つけてないから、塞がっちゃったかなぁ」
W子は少し手間取っているようだった。


僕はタバコを灰皿に置き「貸してみ」と言い、
ピアスを受け取った。




「動かないでね」
僕はちょっとドキドキしながらW子の耳に触れ、ピアスを挿し込んだ。


その間、W子はじっとしたまま動かなかった。






僕はドキドキしているけど、W子はどうなんだろう。
同じ様にドキドキしているんだろうか?


そんな事を考えながら僕は耳から指を離した。





鏡で自分の耳を確認したW子はとても上機嫌で
ピアスを気に入ってくれたみたいだった。




「どう? 似合ってる?」
少し心配そうに僕に聞いてきたけど、それはとても良く似合っていた。




あまり褒めちぎっても自画自賛になってしまうので
「うん。良く似合ってる。さすが僕だね。へへん」


と冗談っぽく言うしかなかった。






「ホント? 嬉しい。大事にするね」
そう言ったW子は、本当に嬉しそうだった





この頃から、僕とW子の会話は、段々とコトバが砕けてきた。


最初、やや敬語だったW子も普通の言葉遣いになり、
僕としては嬉しい事だった。




そして会話の内容も少しずつ変化を見せてきた。


それまではお互いの事を話していたのだが
段々と「僕とW子」の事を話すようになってきたのだ。




「今度、○○に行ってみたいね」とか
「ぽんさん、ホントはあたしと会いたいクセに」とか
「何言ってやがる。W子の方こそ会いたいクセに」とか


そういう雰囲気になってきた。





その日もカフェオレのおかわりをし、何時間も話し続けた。


お店を出て外に出ると、僕は空を見上げ冬の空に息を吐き出し、
もう一度息を吸った。




並んで歩き出した時、僕は左手でW子の右手首を軽く掴んだ。
W子は「なんだろう?」といった雰囲気で僕の顔を見上げた。


僕はニコっと笑い、空いた右手でW子の手袋を抜き取り、
そのまま自分のコートのポケットにしまった。


そして、露わになったW子の右手を左手で握った。






「そうきたか」
W子は照れたような感じでそう言った。


僕は緊張を隠しながら
「まさか手袋を取られるとは思わなかった?」
と強がるのが精一杯だった。


「うん」
そう言ったW子の表情には、曇った部分は無く
僕を安心させた。




とは言え、この寒さもあり、繋いだ手を外に出しているのはかなり厳しいので
僕は自分のコートのポケットに二人分の手を挿し込んだ。


「これであたたかい?」
「うん」


そう頷いたW子は、そのまま僕の肩に顔を埋めた。




僕は繋いだ手の位置をずらし、
W子の指に自分の指をそっと絡めた。





「今日はありがとうございます。
 プレゼントも貰っちゃったし、嬉しいこともあったし、楽しかった♪」


帰りの電車の中、僕はW子からのメールを受け取った。




「嬉しい事? 例えば手袋を取られちゃったり?(笑」
僕は少しドキドキしながら、そう返信した。




「それは素直に「うん」って言っときます。
 これでまたしばらくはあまのじゃくになりまーす(笑」










そんなメールのやり取りをしつつ、僕は家に帰っていった。





[独り言] 高価な時計だからといって、時間が正確とは限らない