12・花火と流れ星

○6月14日:ホルヘ・ルイス・ボルヘス(Jorge Luis Borges)忌日(1986年)
      →幻獣辞典!!
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http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20060614-00000003-dal-ent 日本がブラジルに勝ったら、スクール水着で歌ってくれるらしい



ーーー1990年夏


部活の合宿を終えた僕は、
U子をいつ花火大会に誘うか悩んでいた。




合宿では色々とお喋りも出来たが、特に進展があったわけではなく
僕の中でU子へ対するキモチだけが勝手に進展していた。


勝手に進展し、どうしようもなくなっていた僕は
花火大会で何か「区切り」をつけようと思っていた。




その花火大会は、近所ではかなり大きい大会で
僕も何度か観に行った事があった。






夏休みの活動のため学校へ行っていたある日、
U子も学校へ来ていた。


帰りがけ、僕はU子を喫茶店に誘った。





「花火大会さ・・・」
僕はアイスオレを飲みながら、おそるおそるU子に話しかけた。


「あ、○○のですか?」
「うん。そのさ、誰かと行くの?」
僕は心臓をドキドキさせながら聞いてみた。


誰かと行くのであれば、僕の計画は丸潰れなのだ。




計画と言っても
ただ、長い夏休みの間、会える機会はそう無いし、
せっかく楽しいイベントがあるならば、それを利用しよう。


という姑息な計画だ。




「行きたいけど、まだ誰とも約束してないんですよー」
U子はそう答え、僕を見た。




「そっか。じゃぁ、一緒に行こうよ」
「はいっっ 行きますっ」


U子は快く返事をしてくれた。




元々、花火大会に行きたいね と話してたとはいえ
こうも簡単に返事を貰えると思わなかったが
ココロのドコかでは「誘っても断られはしないだろう」
そう安心している部分があったのも確かだった。






ーーー1990年花火大会


その日は朝から快晴で、
にわか雨も夕立も心配が無いように思えた。


僕は昼間の間にかいた汗をシャワーで落とし
一番気に入っていた服に袖を通した。





待ち合わせは夕方で、U子の家の最寄り駅の近くだった。
会場の駅は人が多すぎるし、それでは僕の計画が上手くいかないのだ。




待ち合わせ場所に着くと、僕はヘルメットを脱いでタバコに火を点けた。
暫くすると小走りにU子がやって来た。


U子は深いグリーンのワンピースを着ていた。
少し涼しくなった夕方に、その色はとても合っていた。




「遅くなっちゃってゴメンナサイ。待ちました?」
U子は少し息を切らせながらそう言ったけど、僕は一服をしただけだった。


「んーん、全然待ってないから大丈夫だよ」
僕はそう言ってU子の顔を見た。








会場は予想通り恐ろしい程の人でごったがえしていた。
あまり打ち上げ場所の近くまで行くと、帰りに苦労するので
少し離れた場所に座ることにした。


屋台でお好み焼きとたこ焼きと焼きそばを買ったので
それを二人で分け、「こういう所で食べると、なんで美味しいんだろうね」
などと話しながら開始を待つことにした。





花火はとてもキレイで盛大で華やかだったけど
僕は隣で座っているU子にドキドキしていたし


むしろ、花火大会が終わった後の事に気を取られていた。


会場からU子の家の駅までの電車は予想通りの混雑で
普段ラッシュを味合わない僕とU子はやっとの事で電車を降りた。




「すごい混雑だったねー」
「はい。何か疲れちゃいました」
そう言ってU子はニコニコしていた。




「今日、時間は大丈夫なの?」
「大丈夫です。花火だから遅くなるって言っておきました」
「そっか。じゃぁ少しお喋りでもしようよ」






「ここの小学校に通ってたんです」
U子が連れて行ってくれた場所は小学校だった。
その頃は昨今のような事件も無く、普通に夜に学校に入り込む事が出来たのだ。




「へー。なんか、この年になって小学校に来るとさ、全部が小さいよね(笑」
「ホント、小さいですよねー」
「あ、でも○○さん(U子の名前)は元々小さいから、そんなに変わらないか」
僕はそう言ってU子をからかった。


「先輩のいじわるー」
そう言ったU子だったが、別に嫌な感じがした訳ではなさそうだった。




U子は本当に小柄で、150cmくらいの身長だった。
僕とならぶと、アゴの下に頭がスッポリ入ってしまう。





僕とU子は小さな「山」になっている遊び場に寄りかかり
空を見ながら話をしていた。




「あれ? 流れ星見えなかった?」
「見えました!!」
「見えるもんなんだねぇ」
その時は知らなかったけど、それはペルセウス座流星群だった。


二人で「あ、流れた♪」などとやっていたのは
単に話題が途切れて「そろそろ帰ろうか」となるのが怖かったからなのかもしれない。


それでも学校の話やU子が飼っている犬の話や
先輩達の話で盛り上がっていた。




「ところでさ」
話が途切れ、一瞬静まった時、僕は話し出した。


いつまでも引っ張っていられない。
いつまでも誤魔化してはいられない。
今言わなかったら、いつ言うんだ?




そんな事を思いながら、僕は意を決してコトバを続けた。





[独り言] 「もうちょっと」じゃなくて「もっと」かな