12・おかえり

http://www.zakzak.co.jp/top/2006_11/t2006110111.html
ちっけぇ!
  1. +
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20061102-00000019-spn-ent >これまで夫婦間で「離婚」の2文字が出たことのなかった でも、誰もが早期離婚を予想した って一文を入れて欲しいなぁ。 参考→http://d.hatena.ne.jp/pon_cat/20050511
■今日のアクマ■

「離婚」 戦闘中の二人を引き離して、遠距離から戦いを続けさせるラッパのひと吹き

引用:新編 悪魔の辞典 (岩波文庫)



「結局ね、彼は奥さんが欲しかっただけなの。
 たまたまアタシと付き合っていただけで、アタシを奥さんにしたかったワケじゃないの」


W子は彼に別れ話を切り出した後、僕にそう言った。




「それって、世間体のために家庭を持つ とかと同じ?」
僕は意地悪くそう聞いてみた。




「うん、たぶん」





梅雨前の良く晴れた一日、僕はW子と会っていた。
彼女は誕生日を数日後に控え、僕はプレゼントをあげた。






「でも、ホント誕生日までにケリがついて良かった♪」
W子は僕があげたプレゼントを見ながらそう言った。




「なんで?」僕はわざとらしく聞いた。
「も〜、分かってるでしょ? 誕生日に誘われたら困っちゃうじゃん」





彼に別れ話を切りだした後、W子は彼に一切連絡をしなかった。


W子は、彼が何かしら反省なり思い起こすなりをしてくれるコトを期待していたが、
いざ会った時に彼の口から反省の言葉を聞いても、決心を変えるつもりはなかった。




「彼からメールが来たよ」
「へ〜。なんだって? 謝ってきた?(笑」
「まさか。○日に会おう って」
「ふ〜ん」
「別れ話を出してちょうど一ヶ月目の日だよ。律儀なんだか几帳面なんだか(笑」
「あははは」


僕とW子は、
いつもの喫茶店でお茶を飲みながら窓の景色を眺めていた。




「なんて言ってくるかねぇ、彼」
僕はいつもの様にクルクル回る椅子で遊びながらW子に聞いた。


「どうだろう。まぁ、謝るコトはしてこないと思うよ(笑」
「わかんないよ〜 泣いて謝ってくるかもよ?(笑」
「あははは。ないない。プライド高いもん、そーゆートコの」
「へ〜。難儀な性格してるなぁ」
「まぁねー」




彼としては、1ヶ月空けたコトでW子の怒りも冷めるだろう
という考えなのかもしれなかった。


これは想像でしかないのだけど、W子から聞く彼の像を考えると、
そう思えて仕方がなかった。




彼の中では
「別れ話を出されたけど、それはW子がたまたま機嫌が悪かったから」
「1ヶ月も経てば気が済んで元に戻るだろう」
「だいたい、こっちには何の落ち度も無い」
「だから謝る必要は無いけど、W子の言い分も少しは聞いてあげなきゃダメかな」
と考えをまとめている感じに思えた。




「まぁ、ちょっとアタシもオニになってくるね」
そう言ってW子は僕の手を優しく握った。




「うん。でも、W子のオニは、僕と半分こだからね」
そう言ってW子の手を握りかえし、




二人で思い出したかの様に笑い出した。(CROSS LINE:12CROSS LINE:13参照)





W子が彼に急に呼び出されたのは、とある日曜日だった。
その日、僕は街に買い物に来ていて、途中からW子と合流するハズだった。




「ごめん、ちょっと遅れるかも」
そうメールが届いたのは、街に向かうバスの中だった。


「りょーかーい。テクテク買い物してるね」
僕はそう返信し、街へ向かった。




僕は必要な買い物をして、ぶらぶら歩いていると
「遅くなってゴメンね。もうすぐ着くから」という メールが届いた。




「うん。大丈夫だよ。いつもの喫茶店に行ってるね」
僕はそう返信して、歩き出した。








「どしたの? 少し疲れた顔をしてるよ」
茶店に入ってきたW子を見て、僕はそう言った。


「うん。あのね、彼にいきなり呼び出されたの」
「え? 来週じゃなかったの? 会うのって」
「うん、そのハズだったんだけど、なんか予定が変わったみたい」
「へー」
「でもね、15分でケリつけてきたよ(笑」
「はやっっ」


彼の家はW子の家と、この街の中間にあった。
だから街へ来る途中で彼の所へ寄ってきたのだと言う。




「家に行っちゃうと話が長くなるだろうし、立ち話にしたの」
そう言いながらW子はタバコに火を点けた。


「それ、正解かも」僕もタバコに火を点けた。
「どんな感じだったか聞きたい?」
「そりゃ勿論聞きたいよ」


「でもね、そんな大した話をしたワケじゃないの」
「だよねぇ。15分ならあっという間だもんねぇ」




「なんかね、会ったときからブツブツと文句みたいなのを言ってたの。
 グチというか、独り言というか」
「なにソレ(笑」


「要約するとね「君が別れたいというなら留める気はないけれど、なんでそう思ったのか理解出来ない。
 君はこないだ僕に文句を言ったけど、そう思われているのは心外だった。
 でも、決心は変わらないようだし、僕は引き下がるよ」みたいな感じだったの」
「え? それはマジで?」僕は呆気にとられた。


彼は、何も反省していないし、分かっていなかった。
W子が何を思い、何を考え、何を期待したか、それを全て無視し
「君がそうしたいなら、そうすれば良い」というスタンスを取ったのだ。




「なんかさー、それを聞いた時、バカらしくなっちゃった」
「なんで?」僕は聞き返した。
「なんでアタシはこんなヒトを好きになってたんだろう って思ってね(笑」
「あはは。でも、全否定はしちゃダメだよ」
「どうして?」W子は不思議そうな顔で僕を見た。


「だって、好きだったのは事実でしょ?
 それを否定しちゃうとW子の過去数年間も否定するコトになっちゃうもん。
 だから、好きだったけど、結局続かなかっただけ って思えば良いと思う」


「・・・うん。そうする」
「でも、まぁ、無事にケリがついて良かったよ」
僕は素直にそう思い、口に出した。


「うん。アタシもそう思う」






「あ、そだ。誕生日、何が欲しい?」
数週間後にW子の誕生日を控えていたので、僕はプレゼントを考えていたのだ。


「えー どうしようなぁ〜」
「ウチのネコ以外なら何でも良いよー」
「えー。ネコが良いなぁ〜」
「ダメ!」




そう良いながら笑っていると、W子は少し真剣な目になった。






「ねぇ、ぽん」
「ん?」








「あのね・・・」
W子は僕の手をそっととった。








「なぁに?」
僕はW子の目を見ながら聞き返した。












「ただいま」












「・・・・おかえり」






僕は少し時間をおいて、そう言った。












おかえり、W子 と。





[独り言] クサベロまた延期