13・朝まで過ごす場所



□2007年2月・17□


「だからこそ、彼女さんはぽんさんと別れたんじゃないんですか?」
K子はそう言って、シッカリと僕の目を見据えた。


「どうなんだろ」
僕はあやふやに答えたけれど、きっとそうなのかもしれなかった。




W子が、僕の行動をどう受け止めていたか
今となっては知る術もないが、その可能性はあったのだろう。





「それよりどうします?」
K子がそう聞いてきた時、僕はまた一人で考え込んでいた。


「え? あ、あぁ。そっか。どうしようか」
僕は我にかえってそう答えた。


「アタシはなんでも良いですよ〜」
そう言ってK子はいたずらっぽく笑った。






「わかった。うん。朝まで付き合おう」
僕は暫く考え込んで、そう答えた。




「ホントに良いんですかぁ?」


K子はそう言って笑ったけど、言いだしたのはK子本人なんだから、
良いんですかぁ? なんて言えた義理では無いのだ。






「うん。今更アレコレ考えるの面倒だし、腹、括らなきゃ(笑」


きっと、何処かで僕自身がラインを引かなくてはならないのだろう。
いつまでも誰に対しても誤魔化していたり、言い訳したりしているワケにはいかないのだ。


どこかで自分自身の行動にケリをつけなくてはならず、
きっと、それが「今」なのだ。




「あ、でも、とりあえずヨメさんにメールはするよ・・・」
「あはは、どうぞ〜」


ケリをつけると言っても、突然連絡も無く帰らなかったら
「何かあったんじゃないか?」と心配させるだけだし、


「女の子と会ってて、朝まで帰らない」とメールするのも
有らぬ疑いをかけられるだけだから、馬鹿馬鹿しい。




だから
「取引先のヒトと飲みに行く事になって、今日は帰れない」
とメールをした。*1




K子は取引先のヒトでもあるのだから、100%のウソではなかった。





「取り敢えず、お腹空かない?」
メールを送り終えた僕はK子にそう言った。


「空きましたねぇ」
K子はそう答えてお腹の辺りをさすった。




「よし、じゃぁ何か食べに行こう」






結局、その時間からは大したお店も開いてなく、
僕とK子は近くにあったラーメン屋さんに入る事にした。






食べ終わるとお店を出て、僕はイップクをした。




「さて、と。どうしようね、朝まで」
僕はK子に聞いてみた。


北風が吹く中、朝まで外に居たら凍死してしまうし、
どう考えても、何かしら屋内に行く必要があった。


「私は何処でも良いですよ〜」




「そうだなぁ・・・」
僕は考える振りをしたけれど、答えはとっくに決まっていた。


会社で朝まで過ごすしか無い。
僕はそう考えていた。




もちろん、ホテルに入って話をするという手段もあったのだろうけれど、
僕はそんな気は一切無かった。


ホテルへ行ったとしても、何も起こらない自信はあったけれど、
ホテルへ行くという行動自体、僕にはあり得なかった。




「じゃぁ、会社へ行こう。まだ電車動いてるし」
僕はそう言って、K子を会社へ連れて行った。






そして、長い夜が始まったのだけど、


結婚してから2回目の朝帰りの相手が1回目と同じくK子で
その場所も同じく僕の会社で、同じく朝までお喋りだけをしている
というのは何かの偶然なのだろうか。




僕はそんな事を考えながら、会社へと向かった。

*1:と送ってる時点で、誤魔化してはいるのだけど・・・