1:きっかけ
□2006年6月□
そもそものキッカケは、1本の電話だった。
その日、つまりW子の誕生日を10日近く過ぎたある日、
僕は1本の電話を受け取った。
☆
W子の誕生日は平日だったので、その数日前の日曜日、
僕は色々と理由をつけて家を出た。
朝からW子と会い、お昼を食べ、プレゼントをあげ、まったりした。
いろいろなハナシをして
たくさん笑って
たくさん抱きしめて
たくさんキスをした。
そんな有意義で幸せな1日を終え、それから数日後の事。
☆
「ぽんさんの携帯ですか?」
会社で受けたその電話の主は、僕の事を確認した。
それはまだ朝の10時で、
僕は朝のメールチェックを終えたトコロだった。
デスクの上に置いてある携帯に
見覚えの無い番号から着信があったのだ。
「はい、そうですが」
「こちら○○病院です。奥様がお産に入られまして、
立合を希望されていますので、来ていただけますか?
すでに産道が開いていますので、お早めにお願いします」
☆
その日の朝、ヨメさんは
「陣痛が始まったかもしれない」と言い入院の荷物をまとめていた。
僕は取り敢えず会社には行かなければならず
「一度会社には行くから、何かあったら病院の人に電話してもらって」
と言っておいた。
だからある程度予想はしていたけれど
こんな早く病院から電話が来るとは思わなかった。
僕は社長に手短に事情を説明し、
父親と母親、そしてヨメさんの実家へ電話を入れた。
そして
病院に向かう電車の中でW子にメールを入れた。
☆
1時間後、僕は病院に到着し産科病棟へ向かうと
「あ、○○さんはここではないんです」と言われた。
指定された救急病棟へ向かうと、看護師が出てきた。
「あー、5分遅かったですねー。もう産まれちゃいましたよ(笑
ちょっと小ぶりなんですが、女の子ですよ」*1
聞くとヨメさんが病院に到着した時には既に産道が開きかけていて
産科への搬送が難しく、救急病棟で出産に至ったとの事だった。
病室に入ると、汗だくになったヨメさんが横たわっていて、
僕の方を見ていた。
僕は「おつかれさま」と言い、
ヨメさんの手を軽く握り、頭を撫でた。
本当に産まれたばかりだったらしく、
子供はまだ身体に血が残っており、
予定日より10日以上も早く産まれてきたので
確かに小さいように見えた。
その日、僕は父親になった。
☆
[独り言] シュッカー
*1:産まれてくるまで性別が分からなかった