2:とまどい



□2005年12月□


ヨメさんの妊娠が分かったのは、2005年の12月の事だった。


それはW子と最初に会った日(CROSS LINE ・5)と
2回目に会った時(CROSS LINE・7)の間の事だった。






ヨメさんが「今日、病院に行って来たの。3ヶ月過ぎてるって」
と言った時、僕は素直に喜ぶ事が出来なかった。


だから
「でかした!」と言って抱きしめたワケでもなく
「わーいわーい!!!!」と大喜びしたワケでもなく






ただ、ヨメさんの頭を撫でただけだった。




なんて心の籠もらない仕草だろう




そう思ったけれど
僕は本当にそれだけの事しか出来なかったのだ。




正直、僕は戸惑っていた。
冒涜の極みだとは思うけど、妊娠が間違いであってほしかった。




それは、
W子と知り合ったばかりだったけど、仲良くなりたいと感じていたからで
その時はまだW子とどうなるか分からなかったけど
もちろんそれが全てではないだろうけれど




僕は呆然とした気持ちになってしまい、
喜ぶ事が出来なかった。




そして、両親や親戚、会社や知り合いに報告したのは良いけれど、
「おめでとう」と言われる度に居心地の悪さを感じていた。


普通に考えれば笑顔で「ありがとう」と言わなければならないのに
僕の顔には、いつも引きつった笑顔しか浮かんで来なかった。





逆算すると、2005年の9月下旬頃に当たった事になる。


ちょうどMy子と仲良くなりだした頃の事だ。






その頃はN子との事が終わり、ある程度僕の心境が落ち着いていた事もあり、
なんとなく「まぁ、このまま大人しく結婚生活を続けていても良いのかなぁ」と消極的に思っていた頃でもあった。


そのためか、ヨメさんとする時に避妊をしていなかったのだ。*1




ヨメさんは30代後半で、
もし子供を考えるならば考えなくてはならないし
その状況で一度避妊をしなかったとすると、その後、避妊をする事は出来なかった。




それが甘かったといえばそれまでだけど
まさかその後W子と出会うとは予想していなかったし、
当時の僕としては仕方がなかったのだ。





だからその12月、


僕は
W子と仲良くなって好きになった
My子との事をどうするか
ヨメさんが妊娠した



という3つの事柄を抱え込んでいた。




僕が今日までそれを書かなかったのは




ヨメさんの妊娠を喜ぶ事が出来なかったから
という事と


産まれてきてほしくない
という気持ちがあったからなのかもしれない。




いずれにせよ、そう思う事は非道極まりないと思うけど
本当にそう思っていたので仕方がない。




W子と2回目に会ったとき
「そういえば、ぽんさん、子供とかはどうするんですか?」
とハナシの流れで聞かれた。




僕は何の気無しに
「なんかね、ヨメさん妊娠したみたい(笑」
と答えておいた。




その時、僕の気持ちはW子に向きだしていたので
出来れば言いたくなかったけど、


隠しておける事でも無いし
言うのであれば
お互いがまだ「好きになる手前」で言ってしまった方が良い。


そう思い、正直に伝える事にした。






W子は「良かったじゃないですかー」みたいな事を言っていたと思うけど
僕は素直に「うん」とは言えなかった。




その後、暫くの間、子供の話題が出る事は無かった。





[独り言] 布団取られた

*1:とはいえ、月に1回も無かったけど