3:その真相



□2006年1月□


本当の事を話したからといって、全てを語っているとは限らない
「[CROSS LINE] 12:その日だけは」とその真相■
「[CROSS LINE] 3:My子からのメール」とその後日談■






「誕生日、何か欲しいもんあるん?」
My子から、そのメールを受け取ったのはW子とキスをした数日後だった。




My子とはすでに1ヶ月近く会っておらず、*1
次に会うのは、僕の誕生日の何日か前だった。


会っておらず、というのは正確な表現ではない。
「会おうとしなかった」というのが恐らく正しい


「これと言って無いんだよね。物欲少ないし(笑」
僕はそう返信した。


実際問題として、あまり目立つモノを貰っても、
置き場に困るのが現実なのだ。


「あ、やっぱそうなん?」
それに気が付いたのか、そんな返事が返ってきた。




「ははは。まぁ、、、ねぇ。じゃぁケーキでもゴチしてよ」
僕はそう返信して、後日、お茶をする事にした。*2


しかし、実際にはお茶をするだけでは終わらなかった。





それはもちろん、年末に僕が決心した
「My子と終わらせる」話をする事だった。


正直なトコロを言うと
終わらせる事自体には何の躊躇も罪悪感も無かった。*3


ただ、
同じ相手に対し、二度目の終わりを告げる事には少し気持ちが重くなった。




そもそもMy子に対して気持ちを向けさせたのは僕だった。
8年前もそうだった。
そして8年経った今もそうだった。


8年前はN子が居て、*4
8年経った今はW子が居る。*5


当事者の僕が言うのもおかしな話だけど
つくづくMy子はツイていない。




ただ、
ここで僕が迷っても仕方ない事だった。




ちょっと、鬼になってきます
僕はW子にそうメールをして、My子との待ち合わせ場所に向かった。





「なんか、すっごい久しぶりやなぁ」
My子の第一声はそれだった。


・・・ほんと、久しぶりだ
僕はつくづくそう思いながらMy子の顔を見た。




その表情には、
久しぶりで嬉しい という感情よりも
ちょっと何かを気に掛けている という雰囲気が強かった。




でも、それもムリが無かった。


考えてみれば、W子と仲良くなり出してから、
My子とのメールの回数もガクっと減ったし、内容も当たり障りの無い物になっていたのだ。


僕も、メールをしていて
「なんか素っ気ないよなぁ」と思いつつも、それを改める気にはならなかった。


多分、何か勘付いてはいるんだろうな・・・
茶店でケーキを食べながら僕はそう思った。




当たり障りの無い話をしていたけれど、
僕はうまく笑ったりする事が出来なかった。




「よし、今だ。今から言うんだ」




何度もそう思ったけれど、
その度にMy子が何か話を初めてしまった。


































あのさ・・・






僕は


「そうそう、ふと思ったんだけどね」といった感じの口調で話を始めた。




「あのさ、子供、出来たんだよね、実は」


My子は表情が固まり、何も言えない様子だった。
僕はMy子が口を開くのを待ったけど、結局コトバを続けた。


「だから、というか、多分、今まで通りのようには会えないと思う」


「そ、そりゃそうやん・・・」
My子はそう言うのが精一杯だった。





僕としては「今まで通りのようには会えない」というコトバの裏に、
何の意味合いも持たせなかった。
それは、裏を返せばどんな解釈でも出来るコトバだった。


つまり「今まで通りのようには会えない」というコトバの受け取り方を
My子自身の判断に委ねたのだ。




男女として会わない
友人としても会わない
男女として会わないけれど、友人としては会う




しかし、My子がどんな意味合いに受け取っても
僕としては終わらせるつもりだった。




表面上は
「子供が出来たからもう会えない」という、いかにもな言い分だったけど、




僕の本心は
「W子が好きになったから会わない」という事だけだった。




つまり、子供の事はあくまでも「口実」に過ぎなかった。





茶店を出て、僕もMy子もコートのポケットに手を突っ込んで歩いていた。
もちろん、寒かったから というのもあるけれど
ここで手を繋いで歩いても、何の意味も無い事だった。


理由が「子供」だっただけに、ハナシ自体は恐ろしくスムーズに進んだ。
手間取るかな?*6
と思っていたので、僕は少し拍子抜けをした。




だからといって簡単だったワケでも無いし
My子が流した、一筋の泪が軽いものだったとは思わない。




「いつまでもダラダラこんな関係ってワケにもいかんもんな・・・とは思っとったし、
 子供っていうキッカケが出来て丁度えかったんよ」




My子はそう言ったけど
恐らくそれは本心ではないだろう。




もちろんW子の事は何も言わなかった。
でも、ウソをついたワケでもなかった。


ただ、全てを話していないだけで、本当の事は喋った。





My子と駅で別れた後、僕がノー天気だったかというと
そんな事は無かった。


僕にだって凹む時はある。


その凹みは、
My子に別れを切り出した事に対して というよりは
子供を口実にした自分自身の悪辣さに対しての方が強かったかもしれない。




でも、凹むのは「その日だけ」にしようと決めていた。
お風呂に入って、寝て、起きたら
いつもの自分に戻っていよう。


そう決めていた。




僕が凹んだままだと、W子だっていい気はしないだろうし
それが重荷になられても、僕の本意ではない。




そして、僕はその日だけは凹む事にした。





[独り言] 晴れると良いなぁ

*1:最後に会ったのはケーキを食べた時

*2:ゆっくり会う事を避けた

*3:鬼悪魔鬼畜だから

*4:ホワイトデーに別れ話をした時ね(笑

*5:この記事参照

*6:もしくは「刺されるかな?」とも思った