4・少しずつ
□2006年2月□
W子を初めて抱いた後に感じた「結果として隣にいるのがW子でもいいかな」
という感情は、その後も薄れる事はなかった。
☆
My子と終わらせた後、僕はW子に「どんな事を話したか」を正直に伝えた。
「やっぱ、鬼だよね、僕」
僕は半笑いでそう言ったけど、
W子は「その鬼はアタシと半分こだから」と言ってくれた。
「でもさ、ひでぇハナシだと思うよ、自分でも」
「なにが?」
「だってさ、子供をダシに使ってんだもん」
「まぁ、そうだけどさぁ。でもウソはついていないでしょ?(笑」
「まあね(笑」
ひでぇハナシだろうが何だろうが、
これで僕はW子にきちんと気持ちを向ける事が出来た。
☆
2月のある日、僕とW子は初めて夕飯を食べに行った。
ゴハンが終わった後、僕の一番気に入っているバーに行き、少しお酒を呑んだ。
僕は一つ危惧した事があったので、W子に聞いてみる事にした。
「あのさ、僕がW子を好きになったり、抱きたいって思うのがさ、
ヨメさんが妊娠したから って思ったりしてなぁい?」
「ん・・・・少し思ってる、かも」
W子は少し困った顔でそう答えた。
奥さんが妊娠中にダンナが浮気というのは良くあるハナシで、
W子がそう考えたとしても不思議ではなかった。
でも、
僕には「ヨメさんが妊娠してるから」という感覚は一切なかった。
「やっぱりそう思ってたか」
僕は隣に座るW子の手を取りながら話を続けた。
「あのさ、もし僕がSEXしたいだけだったら、My子でも良かったワケでしょ? 黙ってりゃ良いんだもん。
でも、そうじゃなくてさ、僕はW子を好きになったからMy子と終わらせたワケだし、
W子の事が好きだから、W子の事を抱きたいと思うワケ。そこにヨメさんの事は関係ないよ」
「うん。ありがとう」
W子は安心したような笑顔で頷いた。
実際、僕はW子以外の誰ともSEXしたいとは思わなかったし、
仮にそういう状況になってしまったとしても、僕は逃げ出したことだろう。
→現にE美の誘いからは逃げ出す事ばかり考えていたし(笑
だから逆説的だけど、ヨメさんが妊娠している状況というのは有り難かった。
理由も説明もなく、何もしなくて済むのだ。
☆
この頃から、お互いがお互いを強く求めるようになってきた。
もちろん肉体的にもだけど、それ以上に精神的に求めていた。
バレンタインが過ぎたある日、W子は彼との事で酷く落ち込んでいて
いつものようにお茶ではなく、パーっと遊ぼう という事になった。
W子が落ち込んでいる原因が「彼」という事に対し、
僕は少し嫉妬し、そして不安になっていた。
遊びながらいろいろ話をしよう。
そう思った。
二人でワイワイと笑いながら遊んでいると、段々とW子の顔に笑顔が戻ってきた。
「今日、会えて良かった。いま、気持ちがすごく軽いの。
もうちょっと早くほぐせれば、ぽんももっと楽だったよね。
ちゃんと、いろいろと言うようにするね」
そう言ったW子は、いつもの笑顔に戻っていた。
☆
W子が彼との付き合いに対して「苦」を感じだした事情は色々あったけど、
一番大きかったのは「求めるモノの違い」だったと思う。
それでも彼と別れるのには抵抗があった。
彼と別れてしまうと、残ったのは既婚の僕。
しかもヨメさんは妊娠中。
そんなロクでもない相手しか残っていないのだ。
実際、W子は不安も不満もあったし、グラグラと揺れていた。
W子にしてみれば
「独身の彼」、つまり平坦な道と
「既婚の僕」という一本橋のどっちを選ぶか という状況だった。
それでもお互いがお互いを必要としていたし、
だんだんと「先の事を考えようね」といった雰囲気になってきた。
「ぽんと居るとね、二人でがんばって行きたいなぁ って思うの。
そのことが嬉しいの」
ある日、W子はそう呟いた。
「うん。少しずつ、前に進んで行こうね」
僕はそう答えた。
☆
[独り言] スキラ チ