28・嫉妬



□2007年1月・10□


そもそも、
何で僕がW子に対して、要求が強くなったのかというと、


それは嫉妬が原因だった。





僕は元々「嫉妬する気持ち」というのを持ち合わせていなかった。








と、思っていた。


でも、実際にはそうではなく、
「嫉妬を感じるような女性」が存在した事が無かったのだ。




ヨメさんにしても、N子にしても、誰にしても、
その子が他のオトコとの「何か」を聞いても、
多少のジェラシーは感じても、嫉妬するような事は皆無だった。


ましてや、束縛してしまったり、
もっと僕を真剣に見てよ
というような心境にもなった事が無かった。




でも、W子は違った。
僕はW子を手放したくない一心で、束縛し、要求し、嫉妬をしていた。





そもそも、僕が


いつ
なぜ
何に
嫉妬するようになったかと言うと、


それは昨年の秋の、W子の他愛の無いひとことが原因だった。




僕はその時、いつものようにW子の会社の話を聞いていた。
それはグチだったり、仕事の成果だったり、そんな感じの事だった。


その時、たまたまW子の社内の私的な話になり、
「会社の人、ぽんが妻子持ちだって知ってるよ」
と僕に言ったのだ。




僕はその時、「あ、そうなんだ(汗」と軽く答えたけど、
心情はそう簡単でもなかった。




僕がもし、W子の会社の人で、W子の事を気に入ったとしたら、
「妻子持ち」というのを利用するだろう。


「妻子持ちと付き合ってたって、ロクな事ないよ。
 休みの日だって逢えないし、何だかんだ言って、絶対離婚しないんだよ」
とか、何とか言って。




離婚の部分はともかくとして、
休みの日になかなか逢えないのは事実だし、
そういった意味では僕は明かに不利だった。


もちろん、
そんな事でW子は気持ちが左右されたりしないと信じていたけれど、
それでも僕は嫉妬してしまったのだ。


そして、
会社の人がW子を気に入っているという真偽は関係が無かった。


僕は勝手な想像の中で、勝手にW子を気に入っている人が居ると想像し
その想像が一人歩きをし、嫉妬をした。






僕は
W子の会社の人に嫉妬し、
W子の先輩に嫉妬し、
W子の仕事にも会社にも嫉妬をした。




出来ることなら、その環境に居させたくない
僕はそう思い、嫉妬をした。




だからこそ事あるごとに
「早く帰らなきゃ」とか
「飲み会、早く切り上げちゃいなよ」とか
「いつ転職するの?」とか言っていたのだ。




本当は「仕事頑張ってね!」と思っていたし、
そう言いたかったけれど、
だんだん、そのコトバを出す事が出来なくなっていった。






そして、
その嫉妬心は段々と違う方向に進んでいった。




もっと僕を見てよ
もっと僕に真剣になってよ
もっと僕の事を考えてよ




それがW子をどんどん苦しめているとは知らずに、


そして、僕自身が気付かないうちに、
僕は自分本位になり、視野とココロが狭くなっていった。






本当は何気なく
「嫉妬してるんだよね(笑」とW子に伝えれば良かったのだろう。


でも、僕は「嫉妬している事実」を認めたくないという気持ちと
「そんな事で嫉妬してるなんて」と思われたくないという気持ちと
嫉妬する事になった「妻子持ち」という事実への引け目から


それをW子に伝える事が出来なかった。





でも、本当は嫉妬する資格は僕には無かったのだ。


さっさと離婚が出来なかったのは僕なのだ。


でも、さっさと離婚が出来ない自分自身に対するイラだちを隠すため、
僕は自分の事を棚に上げ、W子に強く当たってしまった。




そういった心境を、誰かに相談すれば良かったのだろうけど、
僕はそれをしなかった。




僕は誰にも相談せず、
自分一人で悩み、考え、解決をしていった。


結局はそれが間違いだったのだとは思うけど、
僕は自分自身で全てを解決する事に、あまりに慣れてしまっていた。