28・嫉妬
□2007年1月・10□
そもそも、
何で僕がW子に対して、要求が強くなったのかというと、
それは嫉妬が原因だった。
☆
僕は元々「嫉妬する気持ち」というのを持ち合わせていなかった。
と、思っていた。
でも、実際にはそうではなく、
「嫉妬を感じるような女性」が存在した事が無かったのだ。
ヨメさんにしても、N子にしても、誰にしても、
その子が他のオトコとの「何か」を聞いても、
多少のジェラシーは感じても、嫉妬するような事は皆無だった。
ましてや、束縛してしまったり、
もっと僕を真剣に見てよ
というような心境にもなった事が無かった。
でも、W子は違った。
僕はW子を手放したくない一心で、束縛し、要求し、嫉妬をしていた。
☆
そもそも、僕が
いつ
なぜ
何に
嫉妬するようになったかと言うと、
それは昨年の秋の、W子の他愛の無いひとことが原因だった。
僕はその時、いつものようにW子の会社の話を聞いていた。
それはグチだったり、仕事の成果だったり、そんな感じの事だった。
その時、たまたまW子の社内の私的な話になり、
「会社の人、ぽんが妻子持ちだって知ってるよ」
と僕に言ったのだ。
僕はその時、「あ、そうなんだ(汗」と軽く答えたけど、
心情はそう簡単でもなかった。
僕がもし、W子の会社の人で、W子の事を気に入ったとしたら、
「妻子持ち」というのを利用するだろう。
「妻子持ちと付き合ってたって、ロクな事ないよ。
休みの日だって逢えないし、何だかんだ言って、絶対離婚しないんだよ」
とか、何とか言って。
離婚の部分はともかくとして、
休みの日になかなか逢えないのは事実だし、
そういった意味では僕は明かに不利だった。
もちろん、
そんな事でW子は気持ちが左右されたりしないと信じていたけれど、
それでも僕は嫉妬してしまったのだ。
そして、
会社の人がW子を気に入っているという真偽は関係が無かった。
僕は勝手な想像の中で、勝手にW子を気に入っている人が居ると想像し
その想像が一人歩きをし、嫉妬をした。
僕は
W子の会社の人に嫉妬し、
W子の先輩に嫉妬し、
W子の仕事にも会社にも嫉妬をした。
出来ることなら、その環境に居させたくない
僕はそう思い、嫉妬をした。
だからこそ事あるごとに
「早く帰らなきゃ」とか
「飲み会、早く切り上げちゃいなよ」とか
「いつ転職するの?」とか言っていたのだ。
本当は「仕事頑張ってね!」と思っていたし、
そう言いたかったけれど、
だんだん、そのコトバを出す事が出来なくなっていった。
そして、
その嫉妬心は段々と違う方向に進んでいった。
もっと僕を見てよ
もっと僕に真剣になってよ
もっと僕の事を考えてよ
それがW子をどんどん苦しめているとは知らずに、
そして、僕自身が気付かないうちに、
僕は自分本位になり、視野とココロが狭くなっていった。
本当は何気なく
「嫉妬してるんだよね(笑」とW子に伝えれば良かったのだろう。
でも、僕は「嫉妬している事実」を認めたくないという気持ちと
「そんな事で嫉妬してるなんて」と思われたくないという気持ちと
嫉妬する事になった「妻子持ち」という事実への引け目から
それをW子に伝える事が出来なかった。
☆
でも、本当は嫉妬する資格は僕には無かったのだ。
さっさと離婚が出来なかったのは僕なのだ。
でも、さっさと離婚が出来ない自分自身に対するイラだちを隠すため、
僕は自分の事を棚に上げ、W子に強く当たってしまった。
そういった心境を、誰かに相談すれば良かったのだろうけど、
僕はそれをしなかった。
僕は誰にも相談せず、
自分一人で悩み、考え、解決をしていった。
結局はそれが間違いだったのだとは思うけど、
僕は自分自身で全てを解決する事に、あまりに慣れてしまっていた。