2・妄想



□2007年2月・7□ CROSS LINE3 35の後日談として


僕にとっての「終わり」は、
僕の気持ちが冷め、本当にW子の事を諦める時なのだ。



友達との電話を終えた僕は、そう確信した。




某マンガの名セリフではないけれど、
諦めたらそこで終わりなのだ。


逆に言えば、諦めなければ終わらないのだ。





その翌日、僕はもう一度友達と電話をした。
前日はヨメさんも居るリビングで電話をしていたので、
あまり深い内容を話せなかったのだ。




僕は「あ、電話だ」という顔をして、
ヨメさんに「充電切れそうだから」と言って自分の部屋に向かった。




僕は友達にこの数週間の出来事を話した。




ばかねぇ
なんで?
ダメだよ、そんな事言っちゃ




そんな反応を聞きながら、僕は話し続けた。





実に数年ぶりとなる、3時間近い長電話を終え、
僕はハッキリと確信した。




僕は、W子を諦めないと。





しかし、具体的に「何をどうすれば良いのだろう」
という行動は何も思いつかなかった。




どうしたらW子は戻ってきてくれるのだろう。
考えても考えても、分からなかった。




分かっているのは、Wへ対する僕の気持ちだけだった。




しかし、気持ちが残っている事により、
僕は今まで以上に苦しい思いをしていた。






残業をしていて、夜遅くなってくると
「W子もそろそろ仕事終わるのかな?」とか
「今日は早く終わって、デートしてるんだろうか」とか


そういった事を考えてしまう。




週末になると
「今日なんて天気が良いし、デートしてるんだろうか」とか
「いま頃、仲良く手を繋いで歩いているんだろうか」とか


そういった事を考えてしまう。




その度に僕は激しく打ちのめされ
深く、とても深く沈み込んでいった。






そして、沈み込むと
更に黒い妄想の世界を彷徨っていった。






僕の妄想の中でW子が彼とデートをしている。


彼が「前の男だったら、そろそろ家に帰る時間を気にし出すんじゃない?」と言う。
W子が「そうそう、いっつも気にしてた(笑」と答える
彼が「だろ? やっぱ独身だよ、独身」と誇らしげに言う
W子が「ほんとよねぇ。妻子持ちなんて勘弁よね」と舌打ちする。




彼が「前の男だったら、土日だってロクに逢えなかったでしょ」と言う。
W子が「そうそう、どっちかの日に、数時間とかだけ」と答える
彼が「だろ? で、他の日は家族サービスとかしてるんだよ、目尻を下げながら」と笑う
W子が「きっとそうだったんだよね・・・」と哀しそうに答える
彼が「オレはそんな想いさせないよ」と勝ち誇る
W子が「うん」と言って彼の背中に手を回す。






これは僕の妄想だ。


でも
そんな妄想をする度に、僕は吐きそうになり、心が潰されていった。




でも、実際問題として、
僕は時間を気にし、
土日には全然逢えず、
W子に寂しい想いをさせてしまっていたのは事実だった。


目尻を下げた事は無かったけれど、
その他の事に関しては、決して間違ってはいなかったのだ。


だから、
僕は自分自身の妄想に対してすら反駁する事が出来なかった。





諦められない


でも、どうにも出来ない




そんな思考の中、




僕は
笑う事もなく
リラックスする事もなく
誰とも関わる事もなく






ただ、
例えようのない苦しさに悶えていた。






そんな中、
僕はある事に気が付いた。