一番大切な事・7:「その日」の事、「その日」の気持



「ねぇ、ぽんはさ、どのくらい真剣に離婚を考えてるの?」
ちょっとしてから彼女は僕にそう尋ねた。






「そうだなぁ。どう言えば良いんだろ
 あのね、子どもって親からの淀みない100%の愛情が必要だと思うんだ。
 でも、僕の場合はさ、まぁ、数年前から離婚を考えてたワケじゃない?
 それで一度ヨメさんと話し合いをしたけど、ずっと保留のままになってる」


「うん。それを前に聞いた時、奥さんすごいなって思った。
 きっとそれだけ愛情が深いんだと思うの」


「そうかなぁ。住む場所が無いからじゃない?」僕は笑ってそう言った。
「えー。だってもし家を出ても実家とかあるじゃん」
「うん。そうなんだけど、ヨメさん的には実家には戻りたくないみたいよ。
 多分プライドが許せないんだと思うけど」
「プライド高いの?」
「んー、世間体みたいな部分のプライドは高いと思う」
「そうなんだ」そう言って彼女は笑った。


「それにさ離婚の話しをした時、ヨメさんは
 「私たちは住まわせてもらってる立場だから」って言ってたし、
 今は妥協して一緒に住んでるだけだと思う」


「そっかー」


「でさ、その時に離婚の話しをして、結局そのままになっちゃって、
 その後に僕にはまた彼女が出来て別れて って繰り返しでさ。
 まぁ、前の彼女はどうでも良いんだけど、今、こうやってF香がいてさ。
 正直、家に居るのがイヤだし、キツい事が多いの。
 その雰囲気をチビもたぶん感じ取ってると思うんだー。
 だからさ、僕の存在って、家にとっては害悪でしか無いと思うんだ」


僕はそこで一度言葉を切った。彼女は何も言わなかったが、真剣に聞いていた。


「だからね、もう、こういうのは終わらせた方が良いと思ってる。
 僕自身のためにも、チビのためにも、家のためにも」


「うん」


「もちろんF香の事もあって離婚を考えているんだけど、それはまた別の問題だと思ってる。
 例えばF香のために離婚する ってなっちゃうとプレッシャーを与えちゃうし、
 もしF香が僕と離れちゃったとしたら、恨み言みたくなっちゃうでしょ?
 だからそうはしたくないの」


「うん」


「だから半々というか、順序の問題と言うか。
 まず自分自身にケリをつけるために離婚をして、F香との事はそれからみたいな感じ。
 まぁ、明日すぐにでも ってワケにも行かないけど、
 そうだなぁ、少なくとも1、2年後にはケリをつけなくちゃ とは思う」


「うん。ぽんの言いたい事はちゃんとわかる」
そう言って彼女は頷いた。




「でもね、一つ不安というか、悩んでる事があるんだ」
「なぁに?」
「もしね、まぁ先の、仮の話しだけどさ」
「うん」
「僕が離婚してF香と一緒になったとするでしょ?」




彼女は結婚しても子どもは欲しくないという考えを持っていた。
僕はそこにちょっとした不安を抱えていた。


僕は一度子どもを見捨てる事になる。
親として失格だ。
だからもう一度子どもを作る気を持てないかもしれない。
そういう意味ではF香が「子どもは欲しくない」と思っているのは助かる。
でも、もしF香が子どもが欲しいと思った時、僕に遠慮してそれを言えなかったらどうしよう。


僕はそういった話しをした。
「つまりさ、僕は親として失格だから、その辺がね・・・」
「んーん、そんな事ないよ。失格とは思わないよ。そんな風に思わないで」
彼女はそう言って僕を見つめた。


「それに、欲しくなったら仕込んじゃうかもしれないし」
「えー、針で穴を空けたりして?」
そう言って二人で笑った。


「まぁ、そんなんはずっと先の事かもしれないけど、何となく思ったの」
「うん。どう言えば良いのか分からないけど、ありがとう。
 いつも大事に思ってくれてるの、ちゃんと分かってるよ」
そう言って彼女は僕の背中に手を回した。




「ねぇF香」
「なぁに?」
「僕にはF香が必要だよ。ずっと必要」
「うん」


「F香はどう?」
僕は彼女に聞き返した。






「私はぽんが欲しい」






その言葉を聞いた瞬間、僕の中で何かが弾けた。


僕はF香を手放しちゃいけないんだ。僕たちは離れてはいけないんだ。
そう思うと、自然と涙が溢れそうになってきた。


「好きだよ、F香」
「私もぽんが好きだよ」


僕は一度身体を離して彼女の顔を見た。
「どうしたの?」と彼女は聞いた。


「んー、どうしよう。言おうかどうか考えてる」そう言って僕は笑った。
「えー、なになに? 気になるじゃん」彼女も笑った。


「聞きたい?」
「なんか怖いなぁ」
「怖くはないよ」
「良い事?」
「そりゃそうだよ」
「えー、ドキドキする」


「ん、一度しか言わないよ?」
「う、、、うん」
「同じ事は当分のあいだ言わないと思うから、言い納め」
「・・・うん」


「あのね」
「うん」






「愛してる」






もー、何を言うかと思ってビックリしたじゃん
そう言って彼女は顔を隠した。


あー、何か恥ずかしい
そう言いながら照れていた。


「前はこれ言ったらドン引きされたしなぁ」
そう言って僕は笑った。


その時は彼女の気持ちが完全に僕から離れている時だったので
彼女は「このヒトは何を言い出すんだろう」と思ったらしい。


「あの時はねー(笑
 でも、今はすっごく素直に受け容れられるよ」
そう言って彼女はにこにこしていた。





時計を見ると、すでに24時近くなっていて、終電の時間が近づいていた。


「ところでさ、今日の話しってどうやってまとめれば良いのかな?」
僕は笑いながら彼女に尋ねた。


僕は何か良い言い方がないか考えた。


「どうやってまとめるの?」
彼女は横になり、僕の膝枕でウトウトしながら聞いていた。




「んとね、じじばばになっても、ずっとお互い好きでいようね」
「あはははは」
彼女は一瞬笑ったけど、僕のカラダに手を回した。


「うん。ずっと一緒にいたい」彼女はそう言った。
「ずっと一緒だよ」


「ずっと側に居てくれる?」
「ずっと側に居るよ」
僕はそう言って彼女を抱きしめた。






「でもさー」
僕はふと思いついた事を言った。


「じじばばになっても ってさ、ある意味プロポーズだよね(笑」
「あー、ホントだー」
そう言って二人で笑った。





この日、僕と彼女はこんな話しをしていた。


状況の結論が出たようで出ていない感じだったけど、
お互いの気持ちはハッキリした。


でも、それは僕にとって良い内容でもあり、悪い内容とも言える。
彼女にとっても良い内容でもあり、悪い内容とも言える。


そしてこれは
「その日」の出来事であり「その日」のお互いの気持ちだった。





その翌日、彼女は彼の家に泊まりに行った。
これは確定事実では無いけれど、おそらく泊まりに行ったであろう




僕は「好きならそれでいい」と思っていたけど、
やはり彼の家に泊まっていると考えると苦しくなる。


僕はそんなに心が広くない。
僕には嫉妬心もエゴもある。


好きならそれでいい と思っても、
やっぱり彼女が必要だし側にいて欲しいし、取り戻したいと思う。


でも、そう思っても、その言葉を出すわけにはいかない。
まず、自分自身にケリをつけ、それからでなくてはならない。


そう自分に言い聞かせてみたけれど、自信が無かった。


またどこかで暴走してしまうのではないか
また彼女を苦しませてしまうのではないか


僕は自分自身をセーブしなくてはならない。
やるしかない。


そう思っていたけれど、その決心はあっという間に崩れてしまった。
彼女と「その話」をした3日後、僕は彼女と会って、話しをした。


そして、それは僕をさらに苦しめる事になった。

 いろいろと・・・・



現在、2010年11月20日 01:05




久しぶりにこのカテゴリーだな。
結婚って何でしょうね、一体 の本懐だ。








彼女との出来事を書いている最中だけど、
彼女との事はまだ何もケリがついていないけど、








































































離婚が決まりました。
ついさっき。


以前にも話をしていたから、その延長で思ったよりスムーズ。
細かい事はそのうち書くけど、取り急ぎ、ここの皆様にご報告です。

 一番大切な事・6:好き、キス、好き、きらい



僕は繋いだ手を振りほどき、彼女を抱きしめた。


ばか ばかばかばかばか
ごめん ごめんごめんごめんごめん


「ばか。そんなに泣けてきたなら言えば良かったんだよ」
「ごめんね」


僕はもっと手に力を入れ、力強く抱きしめた。
「本当に辛かったんだよ、僕」
「うん、本当にごめんね」
彼女も僕を抱きしめ返した。






「でも、いいよ、もう。なんか号泣したって聞いたらどうでも良くなっちゃった」
「うん。あの時は本当に泣いた。ごめんね」


そして僕と彼女は長いキスをした。





「あー、何だか色々と安心したら力が抜けちゃった」
そう言って彼女は横になって僕の膝に頭を載せた。
僕は彼女の背中に手を置き、髪を触っていた。


「なんだか、あまあまだぁ」
彼女はニヤニヤしながらそう言って甘え、目を瞑った。


「そうなの? 膝枕、彼としたりしないの?」
僕はちょっと驚いてそう聞いた。


「うん。ぜんぜん。なんかドライな感じだよ」
「へぇ〜 そうなんだ。なんか意外」
「こんなに甘えられちゃうの、ぽんだけだもん」
「あはは。膝枕くらい、いくらでもやるよ」
僕は笑いながらそう言った。




「ねぇ、こっち来て」
暫く膝枕をしていると、彼女はそう言って僕も横にさせ、抱きしめた。


こんな感じでいい?
うん くっついちゃった(笑
あはは。くっついちゃったね(笑


そう言ってまたキスをした。
キスをしながらお互い身体に手を這わせ、その体温を感じとっていた。


「いまね、したい気もするんだけど、止めといた方が良い気がするの」*1
彼女は僕の胸に顔を埋めながらそう言った。


「なんで?」
「何かね、しちゃったとして、後で何かを後悔する気がするの。
 そうなるのはイヤだから、今日はしないで、次にしたいの」
「そっかそっか。僕は全然構わないよ」
「ごめんね」
「んーん、ちっとも。
 むしろ、何だろ。僕も今はこうやっていたい。
 しちゃうより、ぎゅって抱きしめていたい感じ。
 だから、する時間が勿体ない感じがする」
そう言って僕が笑うと彼女も笑って「アタシも同じ」と言った。


その時、もちろん僕も彼女もしたかったハズだけど、
単純に身体を合わせるよりも、ずっとずっと抱きしめていたかった。


僕たちはキスをしたり、お互いの身体を触ったりしながらニヤニヤしていた。
「なんかさー、やっぱり相性ってあるよね」
暫くして彼女はしみじみとそう言った。


「そりゃあるでしょ」僕は笑った。


「一人二人しか知らなければ、あぁこんなもんか って思えるけど
 そうじゃなければ相性が大事ってすごく良く分かる」
「僕もそれは思う」
「アタシね、ぜーんぶさらけ出せるのはぽんだけだよ」彼女は笑いながら言った。
「僕だってそうだよ。この相性は捨てられないよ、実際のトコ」僕も笑った。


「つかさ、僕、いまほとんど何も触ってないよ? それなのに今それを思うか」
「あははははは。うん、これだけでもそう思う」
そう言った彼女の身体は、少しずつ熱くなってきた。


僕は彼女のおでこにキスをして、頬にキスをして、唇にキスをしてをして、
耳にキスをして、首筋にキスをした。
彼女はその度に身体を震わせて僕を抱きしめた。




「あんまり強くキスしたら、キスマーク付いちゃうかな?」
僕はそう言って彼女を見た。


「大丈夫だよ、付いても」
「そうなの?」
「うん。前の方だと職場でバレちゃうかもしれないけど(笑」
「そうだけど、首とか、彼にわかっちゃうんじゃない?(笑」
「うん、あのね、大丈夫」そう言って彼女はまた笑った。
「なんだそりゃ。それすら気付かれないのか(笑
 まぁいいや、でもまぁ、なるべく目立たないトコロに付けるね」
「うん。お願い。付けて。付けて欲しい」


僕は彼女の後髪を持ち上げ、うなじに強くキスをした。


「アタシも付けていい?」
そう言って彼女は僕の服をたくし上げ、胸板にキスをした。
「そこじゃなくても、どこでも大丈夫だよ」僕は笑いながら彼女の好きにさせていた。





「話しは戻るけどさ、この先、どんな感じが良いんだろうね」
暫くして、二人ともベッドから起きあがり向かい合って話しをしていた。


「ね、どうしよう」
「どうしようね」


「さっきも言ったけど、僕は何がどうであろうと、F香が好き。それは変わらないよ」
「うん。私もぽんが好き」
「でも? でしょ(笑」
「うん(笑 でも、だね」


そう、結局のところ、その時点で彼女は彼と別れる気は無かった。
それは僕にも分かっていた。


「まぁ、それでもいいよ。
 取り戻したいとかじゃない とは言ったけど、何というか、それは今のこの時点での話しでさ。
 そのうち時間が経ったら取り戻しにかかるとは思うけど、今はまだその時じゃないと思うんだ。
 近いうちにヨメさんと離婚についての話をするけど、そういった事が済んでからでさ」
「うん。ぽんの言ってる事はわかる」


「つまりさ、僕は今の時点では「好き」って気持ちを伝える事しか出来ないし、
 それだけでも充分なのかな、って思うの」
「うん。私もぽんが好きだけど、今の時点では他の事は何も言えない」


「ま、取り敢えずはお互いがお互いを好きってだけでも良いのかもね」
「だね」


「ねぇ、F香」
僕は彼女の手を取っておでことおでこをくっつけた。


「なぁに?」
彼女は僕の手をギュっと握り答えた。


「好き」
「私も好き」


「あーあー」
彼女は「好き」と言った後にそう言った。


「どうしたの?」僕は尋ねた。


「ホントはね、会う直前まで終わりにする気まんまんだったんだよ?
 でもさ、手を繋ぐかどうか聞いたでしょ?
 その時「あぁ、私は手を繋ぎたいんだ」って思っちゃったの」


「うん」


「終わりにするつもりだったんだけどなー」
「無理だった?」
僕は笑いながらそう言った。


「うん、無理だった」そう言って彼女も笑った。


「ね、あのさ。このパターンって、二度目じゃない?」
「どういう事?」


「もう終わりにするって思ってても、やっぱり顔を見たら好きって分かっちゃうのって」
「うん、確かに二度目だ」彼女は頷いた。
「もうさ、終わりにするとか、諦めた方が良いのかもよ?
 結局、何だかんだと、お互い好きって気持ちは消えないんだもん」
「うん。そうだよね・・・・」


「ねぇ、ぽん」
突然彼女は真剣な顔つきになった。


「ん? なぁに?」僕は聞き返した。


「きらい。だいっきらい!!」
彼女はそう言って僕の目を真っ直ぐ見た。


「嫌いなの?」僕は尋ねた。
「うん。だいきらい」
「本当に?」
「・・・・・・好き」


「あはははは」
「もう、笑わないでよ。頑張って言ってみたのになぁ」


「だからさ、もう諦めなよ、それ(笑」
そう言って僕は彼女を抱きしめた。


「諦める」
そう言って彼女も笑った。






「ねぇ、ぽんはさ、どのくらい真剣に離婚を考えてるの?」
ちょっとしてから彼女は僕にそう尋ねた。

*1:セックスのこと

 一番大切な事・5:彼女のウソ



「ねぇ、彼との事とか、ぽんに報告した方が良い?」
ふと思い出したように彼女は言った。


正直、僕は悩んだ。
聞いておきたい部分もあるし、聞いたら聞いたでツラい部分もある。
「んー、どうだろう。やっぱあんまり聞きたくないかな。
 出来れば、上手く誤魔化すかウソをついといてほしい」
僕はそう答えた。


「うん、わかった。じゃぁ上手くウソつくね」
そう言って彼女は笑った。






「でもさ、F香のウソ、あんまり上手くないからなぁ。バレバレだった事も結構あるよ?(笑」
「うん・・・ たぶんバレてるだろうな、ってのは幾つかある(笑」
「でしょ? まぁ、さ、僕にとってはF香が言った事が本当の事だから、別に良いんだけど」
「うん。ぽんはさ、知ってて気付かないフリしてくれてたのも知ってる」
「ま、もう今更なにもウソつく必要ないし、何でも言っていいよ? 彼との事以外は(笑」
「うん、そうするね」
そう言って彼女は頷いた。


「あ、そうだ。さっきね、F香のウソ、一つバレたよ」
僕は笑いながら言った。


「えー、なになになに?」
「何だと思う?」
「えー、心当たりが有りすぎて、どれだか分かんない(笑」
「ちょ、どんだけウソをついてきたんだよ(笑」
「うー」
「ま、いいよ、それでも」
「なんでそんなにMなのよ(笑」
「別にMなわけじゃないよ。さっきも言ったけど、
 ウソつかれようがなんだろうが、好きだからどうでもいいの」
「それがMって言うんじゃない?(笑」
「あははは。そかそか。で、何のウソがバレたと思う?」
「えー、わかんない」


仕方ないなぁ そう言って掃除した時に見つけたチケット手に取った。
「ほら、これ。こんな証拠、残してちゃダメじゃん」
僕は笑いながら遊園地の男と写った顔写真付きチケットを彼女に渡した。


日付は彼女が「女友達と3泊旅行した」日。*1
つまり、彼女は僕にウソをついて(おそらく)その彼と旅行に行っていたのだ。


「あー、やっぱりバレちゃった・・・」
彼女は落胆した様子でそう答えた。





僕もその旅行の事を100%信じていたわけではなかった。
彼女が旅行の写真を日記にアップした時、向かい側の席にどうみても男性な姿が写っていた。
その頃はもう彼女が僕と彼との間で悩んでいた時期だったから、僕は死にそうな気分だった。


でも、まさかまだ僕と付き合ってる最中に泊まり掛け旅行に行ったりしないだろうと思ったし、
そもそも旅行の計画を知ったのは8月の上旬。その時はまだ彼女は悩んでいなかった。


でも、これは誰だ?
僕は混乱した。


彼女からは旅行の初日(遊園地の日)には普通にメールが届いていたけど
二日目からはメールの頻度がガクっと落ちた。


僕は悩みに悩んだ末、一つの推論に辿り着いた。
いや、その推論でしか自分を納得させる事が出来なかった。


彼女は友達との付き合いをとても大事にする。それが男友達でも。
そしてそういった部分で束縛されるのを嫌がる。
僕はそういった彼女の性格を知っていたし、理解もしている。
だけど、やっぱり男友達と泊まり掛けとなると良い気分はしない。




彼女としては
「男友達と旅行に行く」と言ったらぽんをイヤなキモチにさせてしまう
でも、友達付き合いも大事だ
正直に言って「行くな」と言われて束縛されるのも困る
じゃぁウソをついて旅行に行くか
という心境になった。と仮定した。
そう思わないと僕はダメになりそうだったからだ。


そして、メールの頻度が落ちた事も考えた。
彼女は「ただの男友達」として旅行に行っていても、相手はそう思わないかもしれない。
もし夜に「何か」あって、それが彼女の意にそぐわない場合。
もしそうだったとしたら、メールの頻度が落ちる理由にはなる。


そして僕はさらに考えた。
彼女に質すべきか、否か。
でも、どう聞けば良いのか、どう反応すれば良いのか僕には分からなかった。




彼女が旅行から帰ってきた数日後、僕は彼女の部屋に居た。


「ねぇ、旅行ってホントは誰と行ったの?」
僕は唐突に質問した。


「え? ○○ちゃんとだよ?」
「ホントに? ホントは男と行ったんじゃないの?」
「えー、なんで? なんでそう思ったの?」
「写真。日記の写真に、男が一緒に写ってるよ(笑」
「えー、どれ? どの写真?」
そう言って彼女はデジカメを取りだした。


「ほら、これ」
僕は気になっていた写真を指さした。


○○ちゃんは他の写真でも見た事があったけど、その写真に写っている姿は別人だった。
体型もデカいし、手もゴツい。もちろんネイルだってしていない。


「ああ、これかー。○○ちゃんのオフモードだからさぁ」
そう言って彼女は笑った。


「ホントにそう?」
「うん。そうだよ。いやぁ良いネタが出来たよ(笑」


「そっかー、疑ってゴメン。ほんとうにごめん」
僕は真剣に謝った。


どれだけ男みたいな姿が映っていようと、僕には彼女の言う事が真実だった。
だから真剣に謝った。


「もう、そんなに謝らないでよ」
「だって、疑っっちゃったんだもん。本当にゴメンね」
「いいよ、そんなの。でももし男とだったらどうした?」


「んー、多分「ウソをつかせてゴメン」って思ったと思う」
「え? どういう事? なんでぽんがゴメンって思うの?」
彼女の疑問は当然だった。
なんでウソをつかれた僕が謝らなくちゃならないんだ。




でも、僕はなんでゴメンと思ったのかを彼女に伝えた。


「男友達と旅行に行く」と僕が知ったらイヤなキモチにさせてしまう
でも、友達付き合いも大事だ
正直に言って「行くな」と言われて束縛されるのも困る
じゃぁウソをついて旅行に行くか という心境になった。


そんなウソをつかせるような事をさせちゃったのは、僕がきっとイヤがるから。
だからウソをつかせてゴメン なんだよ。
僕がF香の友達関係をまったく気にしなければ彼女はウソをつく必要も無かった。


僕はそんな内容の事を彼女に言った。
そして、メールの頻度が落ちた時の事も彼女に言った。


「メールの頻度が落ちた時があったでしょ?
 もし、あの時「男友達と何かあったら」って考えたの。
 もし、何かあって、それで落ち込んでいたとするでしょ?
 でも、F香はウソをついて旅行に行ったから、僕にはそれを言えないじゃん?
 だからホントは誰と行ったか聞こうと思ったの。
 だって、F香からは言い出せない事だし、僕の方から言えば実は・・・って言えるし」


「そっかー、ごめんね、悩ませちゃって」
「んーん、僕の方こそ疑ってごめん」


「でもさ、意にそぐわなくなくて、私の意志だったらどうした?」
「ん、死んだね、それは。つか、F香はそんな事しないもん(笑」
僕はそう言って笑った。





「あー、やっぱりバレちゃった・・・」
彼女は落胆した様子でそう答えた。


やれやれ。
やっぱりウソだったのか。
僕はそう思ったけれど、不思議と怒りは怒らなかった。
むしろ意味もなく笑いだしそうだった。


「まったく、どう見たって○○ちゃんじゃないもん、あの写真」
「ごめんね・・・」
「ん、いいよ、もう」
「でも、すっごくツラかったんだよ、悩んだ時」
「うん・・・ごめん」




「あの時ね、私、号泣しちゃったの」
彼女は僕の手を取って話し出した。


「あの時?」
「うん。遊園地行った、その日の夜かな」
「うん」
「なんかね、急に泣けてきたの。
 なんでアタシはここに居るんだろう。
 なんでぽんが横に居ないんだろう って。
 そう思ったら泣けてきて、お風呂で号泣しちゃった」
そう言って彼女は笑った。
そうか、だからメールの頻度が減ったのか。
僕の想像は半分当たっていたのだ。




僕は繋いだ手を振りほどき、彼女を抱きしめた。


ばか ばかばかばかばか
ごめん ごめんごめんごめんごめん


「ばか。そんなに泣けてきたなら言えば良かったんだよ」
「ごめんね」


僕はもっと手に力を入れ、力強く抱きしめた。
「本当に辛かったんだよ、僕」
「うん、本当にごめんね」
彼女も僕を抱きしめ返した。

*1:女友達は前日に彼女が泊まった○○ちゃん http://d.hatena.ne.jp/pon_cat/20101114

 実感



あー、なんつーか、もう家に居ると吐きそうになるや。


本当は家って帰る場所なのに、居たいと思える場所が無い。
かろうじて自分の部屋に居るけど、どんどん気が滅入ってくる。





昨日、ちょいと母親の所に顔を出した。


まぁ、いろいろと洗いざらい話しをしてきたんだけど、
その時にヨメさんの話になった。


「いつだったか二人目は? って聞いたんだけど、その時言葉を濁してたのよね、○○さん」
と、母親が言い出した。


そりゃそうだ。
たぶん、数年前の離婚話の後だろうから言葉も濁すだろうな(笑


僕は「あぁ、絶対に無いから」って言ったけど、
うん、まぁ無いよ。




というか、ホント勘弁して、そーゆーの
って母親に言った。




その話が出たおかげで、日々の吐き気に拍車がかかったんだが・・・(笑

 一番大切な事・4:経験則



「ぽん、、、、すき」
彼女は小さい声でそう呟いた。


「やっぱり、好きだよ。顔を見ちゃうとダメだぁ・・・」
「僕だって好きだよ」
そう言って僕は強く彼女を抱きしめた。






「ね、あのさ」
「なぁに?」
「どんな関係でも、って言ったでしょ?」
「うん」
「どんな関係になっても、僕はF香を離さないよ」
「うん」
「どんな関係でも、僕はF香を好きなままだよ」
「うん。私もだよ」
「ずっと好きだよ」
「私もずっと好き」
「そんな事言うと、ホントに離さないよ?(笑」
「離れないもん(笑」





話が一段落した所で僕はタバコに火を点けた。
こういう時にタバコは便利だ。


「何かね、すっごくスッキリして、落ち着いて安心しちゃった」
F香はそういってニコニコ笑っていた。
僕はその笑顔が見れて嬉しかった。




「ね、あのさ。僕が一番欲しいものって何かわかる?」
「わかんないよ、そんな急に言われても(笑」
「だよね。あのね、僕が一番欲しいのはF香の心(笑」
「あははは、キザだ。昭和だ(笑」
「そりゃ仕方ないよ、昭和のニンゲンだもん(笑」
「まぁ私もそうだけど」


「でね、二番目に欲しいのは、F香のその笑顔なんだよ。
 だから今、その笑顔が見れて、すっごく嬉しい」
「もー、またそんな事言うと、嬉しくなっちゃうじゃん(笑」
「あはは。だって、ずっとずっとその笑顔が見たかったんだもん。
 僕はね、その笑顔が見れれば満足なの。
 だからその笑顔を見るためなら何でもするし、何でも我慢できると思う」
「うん。あのね、すっごく嬉しい」
そういって彼女は僕の肩に顔を埋めた。






「でもね、ぽん。アタシ、ホントにひどいよ? 引っ越しの事だってそうだし」
「引っ越し?」
僕は何でそこで引っ越しの事が出てくるのか分からなかった。
彼女は年が明けたら引っ越しをする予定だった。


「ぽん、きっと気付いてると思うよ?」
「ねぇ、ひょっとして同棲するつもり?」
「・・・・うん」
「あぁ、やっぱそうかー」


僕は以前、彼女の引っ越し先の候補の間取り図を見せてもらった事がある。
それは家賃が15万以上し、2LDKのものだった。


その時僕は驚いて、この家賃でやっていけるのかを聞いた。
彼女の返事は、家賃補助が出るからなんとかなるという事だった。
2LDKも必要ないとも思ったけど、僕と同じ一人っ子なので、
「自分の居場所としての個室空間が必要」という彼女の考えを鵜呑みにしていた。


「何となくおかしいとは思ってたんだよね、2LDKだし(笑」
「ごめん(笑」


「つかさ、何でいきなり同棲なの?(笑
 正直なとこ言って良い? それ、F香のキャラじゃないよ(笑」
「えー、そうかなぁ」
「そうだよ。そんなに焦るタイプじゃないじゃん。何か変だ」
「そんな事ないよぅ」
「じゃぁ何で? 何をそんなに焦ってるの?」
「だって、二人で住めばアタシの負担分も減るし・・・」
「・・・アホか!!(笑」
「えー、そんなにアホ?(笑」
「アホだよ(笑」
「だってさぁ、付き合ってからどの位か知らないけど、2週間とか1ヶ月でしょ?
 それで同棲って、しかも家賃って(笑
 そんなのF香の性格から考えても絶対に変だよ」
「だって・・・そう言われても、もう無理だよ」
「なんで無理なの? だって契約はしてないんでしょ?」
「うん、そうなんだけど・・・ そうじゃなくてさ・・・」
「なぁに?」
「当ててみて?」
「わかんないって、そんなの(笑」


僕はそう言ったけど、最悪の想像はしていた。
既に入籍していたら、という想像だった。
でも、彼女だって、そこまで短絡的ではない。


「あのね、彼のご両親に会ったんだよね」


あぁ、そういう事か。結婚を前提とした同棲という事か。
僕はそれで合点がいった。
その反面、過去の経験から考えて、危険な要素も感じ取っていた。


「でね、今度彼も私の両親に会うの」彼女は下を向いてそう言った。
「うん。でも、それがどうしたの?」
僕は即答した。


両親に会ってようが何だろうが、
そんな短期間で結婚を決めるのは危険過ぎる。
しかも、その短期間の決め方が、焦りからきているような気がしたのだ。




「ねぇ、何をそんなに焦ってるの?」
「焦ってなんてないよ・・・」
「焦ってるって。じゃなきゃF香がそんな短期間で結婚とか同棲とか言うはず無いもん(笑」
「・・・・・・」
彼女は黙っていた。


「何かね、逃げ場をわざわざ無くしてるように見えるんだ。
 結婚を前提に付き合ってる って友達に宣言したり、
 ご両親に会ってみたり、同棲をしようとしてみたり。
 既成事実を作って逃げ場を無くそうとしてるように思えるよ?」


「そんなこと・・・ない・・・」


「ねぇ、これは僕がF香を好きとかどうとか抜きにして、一人の友人として言うね。
 焦って結婚しても、何も良い事なんてないよ?(笑
 この僕でさえ、結婚を考えるまで2年かかって、それでもこの状態なんだよ?
 F香はさ、僕とその辺りが似てるから、僕にはわかる。
 いまここで結婚しても、ロクな事にならない(笑
 しかも前、その彼と付き合っても浮気しまくるって言ってたじゃん。
 そんな状態で結婚は出来ないって(笑
 僕だって少なくとも結婚する時は「もう他の人と付き合ったりはいいや」って思ったのに、
 半年でダメで、今はこうなんだよ?(笑」


「ごめん、言って良い? あのね、すっごいリアル(笑」
「あはははは」僕は笑って返事をした。
「でしょ? 僕が言うんだから間違いないよ」


「うん。ぽんの言ってる事、すごい良く分かる。でも・・・」
「でも?」
「だって、話が進んじゃってるし・・・」
「だから「逃げ場を無くしてる」って言ったんじゃん(笑」
「あ、そっか(笑」
「何も今同棲しなくたって良いんだよ。例えば1年付き合ってからでも遅くないよ。
 1年付き合って、あ、やっていけるなって思って、それで同棲でも良いじゃん。
 今はまだ付き合って1ヶ月も経ってないんだろうし、友人としては知ってても
 彼氏としては相手の事は何も知らないでしょ? そういう意味でも早いと思うよ」
「・・・うん」
「それにさ、まだ契約だってしてないんだし、引き返す事は出来るよ?」
「ホントにそう思う?」
「うん。思う。極端な事を言えば、同棲してようとなんだろうと、入籍前なら間に合う(笑」
「あははは、確かに」
「でもさ、同棲しちゃってたとしても、ぽんとは逢えるんだよ?」
「うん。それは分かってるよ。でも、まだ早すぎるって思うの」
「・・・そっか、分かった。じゃぁ、それはちゃんと考えるね。」
「うん」
「でも、一人で考えて良い?」
「もちろん良いよ。じゃぁこの話はここで終わりね(笑」
「うん」





「ねぇ、彼との事とか、ぽんに報告した方が良い?」
ふと思い出したように彼女は言った。


正直、僕は悩んだ。
聞いておきたい部分もあるし、聞いたら聞いたでツラい部分もある。
「んー、どうだろう。やっぱあんまり聞きたくないかな。
 出来れば、上手く誤魔化すかウソをついといてほしい」
僕はそう答えた。


「うん、わかった。じゃぁ上手くウソつくね」
そう言って彼女は笑った。

 一番大切な事・3:ありがとう



仕事を定時で終えた僕は、待ち合わせの駅に向かった。


早く会いたい。
すごく会いたい。
でも、会うのが怖い。
そんな心境だった。


改札を出たその先に、彼女は立っていた。








「おつかれ〜」と僕。
「おつかれぇ」と彼女。
「体調の方はどう?」
「うん、大丈夫だけど、ちょっとフラフラするかな」
「そっかそっか。じゃぁゆっくり歩こうか」
「うん」


そう言って僕は歩き出した。


「あ、手、どうしよっか。繋ぐ?」
僕は右手を彼女の前にそっと出しながらそう言った。


「えー、どうしたい?」
彼女はイタズラっぽく笑いながらそう言った。


「じゃぁ繋ぐ(笑」
僕は彼女の左手を取ってゆっくり歩き出した。





食事を終え彼女の家に着くと、部屋の中はネコたちが荒らしまくっていた。


「ちょっとゴメン。先に掃除したい(笑」
「だよね。僕も手伝うから、やっちゃおっか」
僕はコートを脱ぎ、散らかった部屋を片付け出した。
ゴミはまとめてゴミ箱へ。
散乱していたプリクラや何かのチケットなどは棚の上へ置いた。




一段落し、僕と彼女は低いベッドの上に座った。


「じゃぁ、とりあえずお疲れ様という事で(笑」
そう言って軽いお酒で乾杯をした。




「どうしようか。どうやって話していけば良いんだろ。
 すぐ話した方が良いのかなぁ。もう少し後にする?」
先に口を開いたのは彼女の方だった。


「ん・・・・ じゃぁ僕の方から話した方が良いかな?」
「どっちでも良いよ」
「じゃぁ、僕の方から話すね」
そう言って僕はお酒の缶をテーブルの上に置いた。




「そうだなぁ。何から話そう。
 んとね、メールでも出たけど、もう一度ちゃんと言わせて。
 この2ヶ月くらいさ、色々と負担をかけさせちゃってゴメンね」
僕はまず謝る事から始めた。


「んーん。アタシの方が負担かけさせちゃったよ。
 すっごくイヤな事をたくさんしたもん。ヒドい女って思ったもん。
 ごめんね、ぽんも辛かったでしょ?」
そう言って彼女も僕に謝った。


「ん・・・
 まぁ、僕の方は良いんだ。そりゃまぁキツかったけど、良いんだ、それは」
「そうなの?」
「うん。でも、この話はもうここまでね(笑
 さっきのメールみたく、堂々巡りになっちゃう(笑」
「うん、そうだよね(笑」




「で、だ」
僕は彼女の方に体を向けて姿勢を改めた。


「そうだなぁ、まずはね、ありがとう って言いたい」
「え? なんで? 何か感謝されるような事した?」
彼女は笑いながらそう言った。
F香としては、嫌われるような事をしたりしてきたつもりだったのでそんな反応は当然だった。




「ありがとう、ってのはね。
 F香に逢えた事に対してのありがとうなの。
 F香を好きになれた事に対してありがとう。
 僕の事を好きになってくれてありがとう。
 大事に思ってくれてありがとう。
 そんな事に対してのありがとうなんだ」


「私も、そういった意味ではすごく感謝してるんだよ。
 たくさん好きになれたし、たくさん好きになってくれて、すっごく嬉しい。
 ホントにホントに感謝してるよ」


「うん。ありがとう。
 あとね、こないだ離婚するって話をしたでしょ? それについても感謝してるんだ。
 僕さ、何年か前に離婚を考えてヨメさんに話をして、それっきりだったんだ。
 妥協してたというか、誤魔化して生きてたと思うんだ。
 だけど、F香に会う事が出来て、ちゃんと考える事が出来るようになったの。
 そのキッカケをくれた事にも感謝してるんだー」


「うん。ちょっとビックリしたけどね」
彼女はそう言って笑った。


「ね、F香」僕は彼女の両手を取って呼びかけた。
「なぁに?」彼女は僕の目を見てそう答えた。




「ありがとう。本当にありがとう」
そう言った瞬間、目の奥から涙があふれ出そうになった。
僕はそれを誤魔化すために、彼女の肩に顔を押しつけた。
でもダメだった。
感情が、涙と一緒にどんどん溢れてきてしまった。
僕は彼女の肩に顔を埋めたまま、ずっとありがとうと言っていた。


「私だって・・・」
そう言った彼女の声も涙で震えていた。
彼女は僕の背中に手を回し、強く僕の事を抱きしめた。
「ありがとう。私の方こそありがとう」


僕と彼女は、しばらくの間抱きしめあったまま
ありがとうと言い続けていた。





暫くしすると二人とも落ち着いて、体を離した。


「この先の事なんだけどね」
今度は僕が先に口を開いた。


「どんなカタチになろうとも、僕は縁を切りたくない。
 と言うか、無理。縁は切れないよ(笑
 普通の友達になるのか、違うのか分からないけど、縁は切りたくない。
 僕にとって、F香の存在はそれだけデカいんだ」


「うん。私も縁は切りたくないの。
 でも、どういう関係が良いのか、ってなると良く分からないの。
 たぶん、普通に普通の友達関係ってのが良いとは思ってる。
 きっとね、ぽんとはもうデきない*1と思うだろうし・・・」


「うん。その辺は、まぁ仕方ないと思うよ(笑」
僕はそう言って笑った。


「あのね、私は本当にぽんの事が好きだったの。すごく好き。
 でね、彼との事は、繋ぎの感覚というか、遊びのつもりだったの。
 ビジュアルの面で言えば、ちっとも良くないし(笑
 でも、性格がね、ぽんと似てる部分があったんだ。
 だから、会ったりしてるうちにちょっとずつハマっちゃったの。
 でもさ、それって二人に対してすごく悪い事じゃない?
 だからアタシも悩んだ。
 二人とも取るか、二人とも切るか、どっちかを取るか」


「うん」
僕は彼女の言葉を大人しく聞いていた。


「それでね、私は彼の方を選んじゃったんだ・・・」
「うん。多分、仕方ないと思うんだ。だって、所詮は既婚子持ちさ(笑」
僕はそう言って笑った。


「そう言わないで。それ言われちゃうと、私もつらい。
 だって、知ってて付き合ったのに、知ってて好きになったのに。
 知ってて、納得もしてたのに、結局はそれが理由になっちゃったんだもん」
そう言って彼女は僕に抱きついた。


そう、つまり、結局は僕が既婚者という事が原因だったのだ。


「ごめんね、辛い思いをさせて。
 ごめんね、イヤな選択をさせて」
僕はそう言って彼女を抱きしめ返した。


「んーん、ぽんは何も悪くないんだよ。
 全部アタシのワガママなんだもん」


「そんな事ないって。悪いのは僕なんだ(笑
 極端な事を言えば、もっと早い段階で離婚を決めていたりすれば良かったんだよ」


「そうなのかな。。。」
「たぶん、そうなんだよ」




「でね、僕の今の考え、というか思っている事なんだけど・・・」
「うん。なんだろ、何かドキドキする(笑」
僕はまた少し体を離して話を始めた。


「色々と考えた。日記にさ、結婚を前提に付き合ってるって書いてあった事とか、
 今は僕に気持が無くなってるだろうこととか、そういうのを全部知った上で言うね。
 昨日とか今日とか、フツーのメールに戻ったでしょ?
 それでさ、「久しぶりに長いメールだ」って読んだ時に、何か涙が出てきたの(笑」


「えー、なんでなんで?(笑」
「わかんない(笑
 でもね、その時、改めて思った。
 僕は何がどうあってもF香の事が好きなんだ、って」


「え? だって、あんなにたくさん酷い事したんだよ?
 結婚を前提にとか、ぽんに見せつけるために書いたんだよ?
 それでも好きなの?」
彼女は不思議そうな、少し困惑した顔でそう言った。


「うん。それでも好き。
 F香が何をしても、どんな事をしても好き。
 あ、でもね、だから取り戻したいとかじゃないの。
 ただ、僕がF香を好きでいれれば、それで良いって思ったの」


「Mだ、ぽんはドMだ(笑」
「あはは、そうかもしれん(笑」


「とにかくね、僕の出した結論。
 もうね、何がどうでもいいの。とにかく好き」
そう言って僕は笑った。


「なによ、それ(笑」
そう言って彼女も笑った。
でも、その笑った顔は長続きしなかった。




「ばかぁ。。。ぽんのばか」
そう言って彼女は僕に抱きついた。






「・・・・き」
「え? なんて言ったの?」
彼女の声は小さくて僕には聞こえなかった。




「ぽん、、、、すき」
彼女は小さい声でそう呟いた。


「やっぱり、好きだよ。顔を見ちゃうとダメだぁ・・・」
「僕だって好きだよ」
そう言って僕は強く彼女を抱きしめた。

*1:セックスを、という意味