2・入部





U子が部活の見学に来た翌日、僕は顧問とコーヒーを飲みながら話しをしていた。


「今年は部員入りそうなのか?」
「そうですねぇ、ま、例年通りじゃないですか? 多からず少なからずで」
「ふーん。ま、任すよ。来たいヤツだけ来させれば良いし」
「いつもの「来る者は拒まず」ですか?」
「ん、まぁな」






当時、顧問は30歳になったばかりの若手だった。
若手でありながら、あまりやる気の無い教師だった。


「授業めんどくせぇなぁ」と「やりたいヤツにだけ教える」が口癖で、
なぜか僕は気があって、仲良くしていた。




今更に考えると、僕はこの顧問の影響を過分に受けていると思う。
考え方とか生き方とか。
そしてどこか尊敬する部分もあったのだと思う。


++


顧問の居る部屋には、活動に顔を出さない部員や、部外の生徒も良く来ていた。
別に顧問が人気者だったワケではなく、暇つぶしだと思う。




ある日コーヒーを飲みながら顧問部屋の留守番をしていると
F美がやってきた。


「あ、ぽんくん久しぶり」
「F美じゃんか。どうしたの? 先生会議だってよ」
「そっか。いや、ヒマだから遊びに来たんだけど」
「ははは。コーヒー飲む?」




「今年、新入部員は入るの?」
コーヒーをすすりながらF美は聞いてきた。




「そうだなー。3、4人入れば良い方かな」
「ふーん。あたしもたまには来てみようかな」
「暇つぶしに?」
「うん」




会話はそこで途切れてしまった。


その頃は、まだF美とはそれほど仲良くなく
今のように仲良くなったのは、もっと後の事だ。


++


結局、U子は友達と一緒に部活に入る事になった。


僕としては「お、新入部員が入った。良かった良かった」
といった程度の感覚でしかなかった。


もちろん、その時は、だ。


++


数日後、大魔王と遊んでいる時の事。




「ぽんさぁ、彼女作らないの?」
「えー、面倒だからいい」


「じゃぁ、あたしの友達でも紹介してあげようか?」
そう言って大魔王の彼女が横やりを入れてきた。




「いや、だからいらないってば」
「ふーん。勿体ないなー。誰か気に入ってる子とか居ないの?」
「いないなぁ。これと言って」


「わからんよ、コイツの事だから、何かあるよ」
「先輩と一緒にしないで下さい」




この、先輩たちとのやり取りは、僕が結婚するまで続いた。




いつも大魔王先輩に
「ぽんの事だから、何かある」


そう言われ続けたのだ。10年間も(笑